研究報告書

【令和4年度】 脳・心臓疾患の過労死等事案における脳梗塞の病態に関する研究

【令和4年度】 脳・心臓疾患の過労死等事案における脳梗塞の病態に関する研究
目次

研究要旨

この研究から分かったこと

業務上認定事案における脳梗塞の病態としてラクナ梗塞が有意に多く発生しており、過労死等の発症メカニズムに高血圧が関与している可能性が示唆された。

目的

過重労働と循環器疾患の発症の関連を示す報告はあるものの、そのメカニズムについてはいまだ不明な点が多い。本研究では、過重労働による脳梗塞発症メカニズムを探ることを目的とし、脳梗塞の責任血管及び病態分類について業務上認定事案と業務外認定事案との比較検討を行った。

方法

過重労働と循環器疾患の発症の関連を示す報告はあるものの、そのメカニズムについてはいまだ不明な点が多い。本研究では、過重労働による脳梗塞発症メカニズムを探ることを目的とし、脳梗塞の責任血管及び病態分類について業務上認定事案と業務外認定事案との比較検討を行った。

結果

脳梗塞の責任血管は、業務上・外で前方循環系、後方循環系の割合に有意な差を認めなかった。椎骨動脈解離に限って分析しても有意差はなかった。病態分類では、業務上でラクナ梗塞が20% と業務外の13% と比較し有意に多かった (p=0.045)。ラクナ梗塞の発症は業務上事案で R 1.75 (95%CI:1.03-2.97) と有意に高かった(属性を調整後)。

考察

本研究では、業務上認定事案においてラクナ梗塞の発症が有意に多いことを明らかにした。ラクナ梗塞は穿通枝血管の高血圧による障害が発生メカニズムであり、業務上認定疾患で高血圧性脳出血が多い事と同様に高血圧を介したメカニズムが関わっている可能性が示唆された。今後、過重負荷が穿通枝を障害する詳細なメカニズムについて研究が必要である。また、長時間労働者の面接指導などにおいて血圧の測定を行い、リスクの高い者には過重負荷を避けることも過労死等防止に重要と考えられる。

キーワード

過労死、脳梗塞、ラクナ梗塞

執筆者

守田祐作

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