仕事のストレスを改善する参加型職場環境改善ツール
こころの健康と職場環境改善の意義
最近の研究によって、安全・健康で、働きやすい職場(いきいき職場)を目指して職場環境を改善することは、従業員のこころの健康(メンタルヘルス)に役立つことがわかってきました。特に、自分たちの働く職場環境を管理監督者や同僚と一緒に見直して、皆で働きやすい職場環境に改善する参加型アプローチですすめると、職場のコミュニケーションや相互支援に良い影響があることが確認されています。また、従業員が働きやすい労働環境は生産性に直接的・間接的に良い効果をもたらすことも知られています。
こころの健康と聞くと、人間関係や相談窓口などに目を向けがちです。しかし、職場の人たちによる参加型職場環境改善では、幅広い視点で職場環境をとらえることが重要です。なぜなら、こころの健康に関連する職場環境は、単一の要因ではなく、いくつかの要因が複雑に絡み合って影響を与えているからです。
職場環境改善の4つの領域と具体的な改善視点
職場のことをよく知っているのはその職場で働いている人々です。そのため、職場で働く人々自身が皆で話し合いながら、幅広い視点で職場環境をとらえて改善策を立案していくことで、適切なアセスメントの実施が可能になります。職場環境改善の4つの領域と具体的な改善視点について図2にまとめました。
職場環境改善の進め方
ここでは、具体的な進め方とそのヒントについて解説します。図3に職場環境改善の年間のスケジュールと手順例を示しました。職場ごとにいきいきワークを実施し、改善計画をつくり、期限内に実施します。
手順1から手順4のポイント
手順1 準備・計画
職場環境改善の方針、取り組みを進めるための体制や担当者について事業場で合意形成し、事業場全体に周知します。職場の管理監督者やキーパーソンを巻き込みながら参加職場ごとの取り組みとして進めていくことが重要です。
手順2 いきいきワーク
職場ごとに職場環境改善の計画を話し合うためのグループ討議を行う短時間の検討会を「いきいきワーク」とよびます。いきいきワークは60 分程度です。なるべく職場のメンバーの半数以上が参加できる日時に設定し、限られた時間を効果的に活用するため、事前にチェックリストを記入してきてもらう、グループ 討議でのグループ構成(5-6 人がベスト)や司会、書記などの役割も決めておく、など工夫します
手順3 改善計画の作成と実施
いきいきワークでの検討結果を参考に、職場の状況や資源(人的、物的)を考慮してすぐ実施できる改善について計画を職場ごとに決めます。
改善計画・報告シートに書きこめるよう、いつ、だれが、何を行うのか、具体的に決めます。改善計画は職場ごとに3つまでを目標にします。
手順4 成果発表と記録
職場環境改善の実施内容や改善を取り組んだことでの成果(効果)の報告は、あらかじめ提出期限を設定しておきます。改善計画・報告シートを使って、報告する内容を決めておくと、負担が少なく取り組みの進捗や成果が確認できます。
職場環境改善に用いるツール
表1で、実際に職場環境改善に取り組む際に活用できるツールを紹介しています。実際に職場環境改善を進める際には、これらのツールを活用することで職場環境を効果的にとらえ、その中ですぐ実施できる改善をとりあげていくための筋道を立てることができるのです。職場環境改善は職場(数名から数十名)単位で、複数の職場で同時に並行してすすめます。
これらのツールは、職場の人数分コピーをして使用する事ができます。
*もっと詳しく知りたい方は
- いきいき職場づくりのための参加型職場環境改善の手引き
https://mental.m.u-tokyo.ac.jp/old/1595.pdf - みんなで取り組むいきいき職場づくり
https://www.ikiikisyokuba.jp/index.html - これからはじめる職場環境改善~スターのための手引き~研修の教材 https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/johoteikyo/tabid/1330/Default.aspx
- 職場環境改善ツール・こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト https://kokoro.mhlw.go.jp/manual/