対策実装班

対策実装班
目次

過労死等に関するこれまでの研究成果を活用した対策が「実装」されること、すなわち実効性のある対策が着手され、適切に継続・運用されることが必要です。そのため、令和3年度に「過労死等防止対策実装研究班」を立ち上げ、過労死等の防止対策の実装・定着の方策を検討する研究を行っています。

対策実装タスクフォース

令和3年度に、対策実装研究班、産業保健の有識者及び労務の専門家のメンバーによるタスクフォースを立ち上げ、過労死等の防止対策の実装のための課題の検討、重点業種(運輸業、建設業)の現場のニーズと過重労働対策の良好実践例の収集等を行いました。令和4年度には、事案研究等の成果とステークホルダー会議等での議論をもとに各種調査の実施や過重労働対策の提案を行いました。

ステークホルダー会議

産業現場の具体的なニーズを把握し、実行や定着可能な対策を実装するために、企業の経営者や、安全衛生のリーダー、事業者団体のリーダーといった産業界のステークホルダーが議論に加わって、年2回のステークホルダー会議を開催しています。ステークホルダー会議では、現場のニーズや課題についての意見聴取を行い、対策につながる現場での各種調査の実施及び、対策案の施行に協力をいただいています。

過労死等対策6つの視点

過労死等事案分析などの成果から、過労死等を防止するために大切と考えられる6つの視点を、「6つの柱・目標」として整理しました。

過労死等事案分析から整理された職場で重要な過労死等防止対策 6つの柱・目標過労死等事案分析から整理された職場で重要な過労死等防止対策 6つの柱・目標

過労死等防止の5つの対策アクション

これまでの研究成果と、タスクフォースとステークホルダー会議の議論をもとに、運輸業と建設業の産業現場での具体的な5つの対策アクションを提案し、現場での試行と評価を行っています。

5つの対策アクション5つの対策アクション

アクション1:ハイリスク者の把握と対策

事業者・管理者が、健康診断結果から疾患を発症しやすいハイリスク者を把握して放置せずに対応することが重要です。事業者が速やかにハイリスク者を把握できるツールを開発するとともに、病院受診を促すことができるような対策実装モデルの策定に向けて研究をしています。

アクション2:重層構造の理解と深堀り

下請け・孫請け等の重層構造と長時間労働やストレスとの関連を調査し、業種ごとの実態に適合した対策検討に向けた意見及び資料の収集を行う研究を進めています。

アクション3:中小事業場・産業保健サービスの提案

中小事業場における安全衛生活動向上・健康管理を支援し、過労死等防止対策の定着を支援するチェックリスト等のツール開発や、支援事業のモデルを検討する研究を行っています。

アクション4:生活習慣の改善

労働者自身が生活習慣の意識、把握、改善を進めるためのツールを、産業現場での実践を通して開発する研究を進めています。

アクション5:改善型チェックリストの開発と実践

過労死等が予防できる安全で働きやすい職場環境の構築を支援するための研究を行っています。従業員が参加するグループワークや職場の研修などの改善活動を想定したプログラムと、その支援のためのチェックリストの開発と実践に向けた研究をしています。

今後の活動予定

今後も実施されるステークホルダー会議において、5つの対策アクションの経過と成果を報告し、意見聴取と討議によってさらなるブラッシュアップを検討していきます。また、対策アクションのプロセスの記録、成果のあった好事例の記録・収集を実施し、過労死等の防止対策の実装のための資料として提供をします。

鈴木 一弥(すずき かずや)
記事を書いた人

鈴木 一弥(すずき かずや)

過労死等防止調査研究センター(RECORDs)の特定有期雇用研究員で、事案研究班と対策実装班に所属。専門分野は産業心理学、産業人間工学、労働科学。過労死等の防止対策、運転労働、疲労対策、作業のエルゴノミック改善に取り組んでいる。主要な職歴は、愛知学院大学文学部の助手や公益財団法人大原記念労働科学研究所の研究員など。オフの時間は美術館やライブ・コンサートなどのアート鑑賞をすることで過ごしている。特に好きなのは「横浜トリエンナーレ」や出身地の愛知のトリエンナーレのように、展示会場が散らばっていて、ふだんあまり行かない場所を移動しながら見て回るタイプの現代アート展である。