ストレスフルな勤務

ストレスフルな勤務
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何がストレスの原因になっているか

“ストレス”とはよく日常的に使われている言葉ですが、では、実際に、人々は何をストレスと感じているのでしょうか。厚生労働省の労働者を対象に行っている調査では、仕事の量、仕事の質、対人関係、仕事の失敗・責任の発生が比較的ストレスの原因としてあげられています。

図 ストレスの具体的な内容(厚生労働省 令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)より) ※ 強いストレスとなっていると感じる事柄があると答えた労働者が、その内容を3つ以内で選択図 ストレスの具体的な内容(厚生労働省 令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)より)
※ 強いストレスとなっていると感じる事柄があると答えた労働者が、
その内容を3つ以内で選択

ストレスと病気

実際に、ストレスは病気の発症とどのように関わっているのでしょうか。一般的に、心理社会的なストレスは、うつ病などのメンタルヘルス不調、心臓疾患、脳血管疾患の発症と関わっていることが知られています。例えば、比較的最近の研究では、約15,000人の日本人労働者を対象に、ストレスチェックで“高ストレス”と判定された人と判定されなかった人について、1年間の追跡調査を行っています。その結果、高ストレスと判定された男性は、そうでない男性と比較して6.59倍、高ストレスと判定された女性は、そうでない女性と比較して2.77倍、1か月以上の疾病休業のリスクが高かったことが報告されています。

ストレスにどのように対処するか

ストレスは悪いのはわかっているが、でも、個人では対処しようがないのでは、と思う方もいるかもしれません。確かに、仕事の量や対人関係は、個人の努力だけではどうしようもない時もあります。ただし、ストレスによって生じる不安、落ち込み、イライラなどについて、例えば、体を動かす、リラクセーションを行う、しっかり睡眠をとる、などの方法によって解消することができます。

また、不安や落ち込み、不眠などが数週間以上続いている場合は、早めに医療機関に相談することをお勧めします。過去の研究では、4人のうち3人が、うつ病の可能性があるのに、気がつかずに病院を受診していないことも報告されています。最近の国の統計でも、うつ病などの精神障害の罹患数は増えつつあり、早期発見、早期治療が病気の予後を考える上でも重要です。

参考文献

  • Tsutsumi A., Shimazu A., Eguchi H., Inoue A., Kawakami N. (2018) A Japanese Stress Check Program screening tool predicts employee long-term sickness absence: a prospective study. J Occup Health. 25;60(1):55-63.
  • Wang PS, et al. (2007) Use of mental health services for anxiety, mood, and substance disorders in 17 countries in the WHO world mental health surveys. Lancet. 370(9590):841-50.
井澤 修平(いざわ しゅうへい)
記事を書いた人

井澤 修平(いざわ しゅうへい)

過労死等防止調査研究センター(RECORDs)の上席研究員で、専門分野は精神神経内分泌免疫学、産業保健心理学、産業ストレス。早稲田大学先端科学・健康医療融合研究機構などでの職歴を持つ。現場介入調査チームでバイオマーカーの部分を担当し、ストレスや過重労働の生理的な影響を、唾液、毛髪、爪に含まれるホルモンなどによって評価している。モットーは「才能とは努力を継続できる力である」。オフの時間はインドア派で、TVドラマを見たり、ゲームをしたり、本を読んだりして過ごす。