現場介入調査班
目次

動画:労働者の疲労問題に対して多角的にアプローチ
(過労死等等防止調査研究センター 現場介入調査チーム)

現場介入調査班の仕事

現場介入調査班では、職場で生じている疲労問題に焦点を当てて、それを引き起こす要因を検討するための実態調査や、疲労対策を職場で行った場合の効果検証を目的とする介入調査を主に行っています。具体的に、私たちの班では長時間労働や過重労働の影響が懸念される夜勤・交替制勤務に従事する看護師や介護労働者、トラックドライバー、システムエンジニア等のIT労働者等を対象として研究を進めてきました。また、最近では、リモートワークの普及によるオフでの仕事の連絡の影響についても着目して調査を進めています。

図1.現場介入調査班の活動図1.現場介入調査班の活動

図1に示されているように、私たちの班では実際の労働現場に行って、そこで働く人々の疲労状態を様々な測定指標を用いて測定し、対策の効果を検証することを行っています。疲労と一言で言っても、仕事の性質や働き方によって、強く訴えられる疲労症状が異なってくるため、疲労を計ることは非常に難しい問題です。そのため、私たちは事前に対象になる職場の情報をヒアリング調査や見学することで収集して疲労測定方法を決定しています。

独自の調査ツールの開発

私たちのもう一つの大きな活動としては疲労やストレスを測定するためのツールの開発があります。1つは「疲労checker」というスマートフォンがあればOSを選ばずに、心理指標や反応時間検査等の認知課題が実施できるシステムの開発を行ったり、今までなかった過労死等に関連した過労リスクを測定するためのツールとして「過労徴候しらべ」調査票の開発も行っています。また、ストレスのバイオマーカーに関する研究として、唾液や爪、毛髪等を採取して分析することで生化学的にストレスを評価する手法も研究しています。これらの開発を通じて、過労死等や過重労働による健康障害の予防のための調査の実施の効率化や、過労リスクの見える化を目指しています。

オーダーメイドの疲労対策研究

この調査班のもう1つの特徴として「職場の疲労カウンセリング」と名付けられた手法を用いて介入調査を行っている点があげられます。その理由としては、すべての働く人々に共通した効果的な疲労対策は難しいという発想があります。働く人々や職場の特性も異なるので、丁寧にその職場の特性をとらえて疲労対策を考えなければ、その効果は薄いものになると考えています。そこで図2に示したように、調査を行う際には、必ず、どのような疲労対策が現場で働く人々のニーズが高くて、かつ効果的であるのかをヒアリング調査等で抽出して現場のスタッフと共に実効性のある対策を検討してから、その対策の効果検証を行っています。このようなプロセスを私たちは「職場の疲労カウンセリング」と呼んでいます。

図2.職場の疲労カウンセリング

現場介入調査班はさまざまな専門を持つ下記のメンバーで日々、過労死等や過重労働の防止に取り組んでいます。

研究員
専門
 労働者の疲労と睡眠、産業保健心理学、労働科学
松元俊産業保健学、人間工学、健康科学
井澤修平  精神神経内分泌免疫学、 産業保健心理学、 産業ストレス
池田大樹 睡眠心理学、労働衛生
西村悠貴  生理人類学、 生理心理学
木内敬太産業組織心理学、 臨床心理学
元研究員
専門
発達障害、実験心理学、自閉スペクトラム症、作業療法
研究補助員
玉置敦子


久保 智英(くぼ ともひで)
記事を書いた人

久保 智英(くぼ ともひで)

過労死等防止調査研究センター(RECORDs)の上席研究員で、専門分野は産業保健心理学、睡眠衛生学、労働科学。労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の他、産業医科大学での職歴を持つ。フィンランド国立労働衛生研究所での客員研究員としての活動も経験。モットーは「やってやれないことはない、やらずにできる訳がない」。研究のイロハを教えてくれた師匠たちを尊敬している。