夜勤・交替制勤務
目次

夜勤・交替勤務が何故、健康や安全に良くないのか、どのような健康影響が考えられていて、どのような対策があるのか?

私たちの生活に必須の夜勤・交替制勤務

真夜中に仕事をしたり、交替制を組んで働いたりしてくださる人々がいます。このような夜勤・交替制勤務者がおられるからこそ、私たちは安心して眠れますし、24時間にわたる様々なサービスも受けられます(物流、移動、医療、介護、電気・ガス・水道、治安、情報技術など)。厚生労働省の調査によれば、我が国における夜勤・交替制勤務者の割合は年々増えていて、直近では30%を超えています。こうした働き方を今の社会がますます求めていると言えます。

夜勤・交替制で働くこと

夜勤・交替制の下で働く時間帯が変わると、生活全体が一変します(図)。まず、光の当たり方(明るい・暗いという光環境)が変わります。そのせいで、心身の働きのリズムを刻む体内時計が乱れやすくなります。次に、食事のタイミングや内容が変わります。そしてなにより、眠るのが昼間になったり、夜間になったりします。特に、昼間は体内時計からみて活動モードになっているため、ぐっすり眠ろうにもできなくなります。これらに加えて、飲酒、運動、余暇なども変わります。

こうした変化が長い期間にわたって続いた場合、体内時計は正しく動かなくなる、睡眠の量と質は低下する、体重が増えるなどの諸問題が起こります。結果として、体や心の不調につながります。その都度、回復できればよいのですが、もしうまくいかないと、各種の病気(脳・心臓疾患、糖尿病、高血圧症、乳がん、うつ病など)、職場でのケガや事故につながるおそれが高まります。

求められる対策

職場が取り組むべき主な対策として、3つ挙げられます。第一は勤務間インターバルで、夜勤・交替制では「シフト間インターバル」とも言えます。その時間間隔を充分に長くとることで、睡眠時間を確保したり、疲労回復を促したりできます。第二は夜勤中の仮眠で、夜勤にはなくてはならないものです。夜勤中に30分ほどの仮眠をとると、集中力を保てます。12時間や16時間に及ぶ長い夜勤では2時間ほどの仮眠枠を設けることが強く勧められます。そうした仮眠枠をとれるよう、業務内容を工夫する必要があります。第三は教育研修です。夜勤・交替制勤務に深く関連するテーマ(体内時計、睡眠・眠気、健康障害、ケガ・事故など)を学ぶ機会を定期的に設けることが大事になります。

労働者個人による対策は職場対策の3点に対応させて考えるとよいでしょう。例えば、シフト間インターバルでは、良好な睡眠をとって疲労回復を図るよう、過ごすことが大切です。そのためには、職場での教育研修から学んだことを参考にして、主睡眠(一日の中で最も長い睡眠)や仮眠のタイミングや長さを自らの夜勤・交替制スケジュールに即して、適切に調整することが求められます。なかでも、夜勤に入る前に2時間程度の仮眠をとっておくことは、夜勤中に起こる眠気や疲労を和らげるのに役立ちます。

図 夜勤・交替制勤務と健康,安全,生活の質図 夜勤・交替制勤務と健康,安全,生活の質
(出典:Kecklund & Axelsson, BMJ. 2016;高橋, 睡眠医療. 2019)


高橋 正也(たかはし まさや)
記事を書いた人

高橋 正也(たかはし まさや)

過労死等防止調査研究センター(RECORDs)のセンター長で、専門分野は産業睡眠医学。過労死等研究では、各チームの研究を支援しつつ、研究代表として全体を統括。研究者としてのキャリアは、労働省産業医学総合研究所の研究員から始まり、その後、米国ハーバード大学医学部ブリガム・アンド・ウィメンズ病院・睡眠医学科の博士研究員を経て、現在の地位に至る。睡眠、生体リズム、勤務スケジュール、職場の心理社会的環境、過重労働が研究テーマ。また、仕事とプライベートのオンオフのバランスを重視しており、オフの時間は家族と過ごすことを楽しみにしている。