疲労測定アプリ「疲労checker」

疲労測定アプリ「疲労checker」
目次

疲労checker(疲労チェッカー)は、疲労に関する調査を簡単・効率的に進められるようにRECORDsが開発した、疲労や疲労感を測定・記録するためのアプリです。

元々は Android版のアプリとして生まれた疲労checkerですが、より便利にそして柔軟な調査ができるように、WEBアプリ版として生まれ変わりました。このページでは、新しくなった疲労checkerについてご紹介します。

まだ準備が整っていませんが、いずれは本アプリを活用して会社の衛生管理や研究を行っていただけるように、一般公開に向けた準備も進めています。

疲労checkerが開発された背景

RECORDsの現場介入チームが担当している調査研究では、日々働いておられる労働者の方々の疲労度合いを計測する場面が多くあります。働きすぎや過度の精神的負担で生じた疲労は、思考能力の低下や肩こりといった幅広い影響を及ぼし、疲労感として本人に自覚されます。そのような疲労やその影響を複数回計測するのは、お忙しい調査参加者にとってもそして私たち研究者にとっても大変です。

そこで、参加者にとってなるべく負担の小さい方法で、かつ学術的に信頼性の高い方法で疲労状態を計測するための手段として、疲労checkerが開発されました。また、すべてのデータをデジタル化することにより、調査を実施する私たちの作業の効率化も目的としています。

疲労checkerの特徴

新しい疲労checkerは、複数時点の疲労を様々な指標を用いて測定できるように設計されています。

多角的な疲労調査

新しい疲労checkerでは、自覚症しらべや生活時間調査、フリーフォーム(Google formsのような自由なウェブアンケート)といった主観的な疲労調査の項目に加えて、Psychomotor Vigilance Task(PVT)のような心理課題による客観的な疲労調査が行えます。疲労感として重要な主観的な指標に加えて客観的な指標を計測することで、より多角的により信頼性の高い調査を行うことができます。

複数回の計測に対応

私達の実施する調査では、一人の参加者に何度も質問にご回答いただくことがあります(例えば勤務日と休日のそれぞれ朝晩)が、疲労checkerには条件によって調査項目を変える機能を搭載しました。更に、煩雑なログイン作業がなくても、同じスマートフォンから送信されたデータは同一参加者のデータとして記録される機能もあります。これらの機能によって、多時点での疲労をチェックすることが可能になりました。

心理課題の実施にも対応

最近の研究では、紙やウェブフォームで尋ねる質問票調査に加えて、ビデオゲームのような心理課題を課す例も増えてきました。疲労checkerでも、Psychomotor Vigilance Task(PVT)やフランカー課題のような心理課題を実施できる機能を搭載しています。これらの心理課題は、jsPsychを使って動作させることで、得られるデータの学術的な妥当性にも配慮しています。

スマホだけで調査に参加できる

疲労checkerは、クラウド上に構築されたウェブアプリです。したがって、参加者の方がスマートフォン(iOS, Android)を持ってさえいれば調査に参加いただけます。専用の機材や紙と鉛筆はもう要りません。また、調査担当者(研究者など)はリアルタイムでデータの集まり具合がわかりますので、データ欠損につながるトラブルにも迅速に対応することができます。

疲労checkerで計測できる項目

疲労checkerでは以下の調査項目を、研究計画や測定のタイミングによって柔軟に組み合わせて調査することができます。データは逐次サーバにアップロードされ、管理画面からまとめてダウンロードすることも可能です。

項目
説明

疲労感

自覚症しらべの質問項目を提示し、点数を自動計算します

VAS

Visual Analog Scaleをつかって、様々な質問に対してリッカート法よりも直感的な回答を収集できます

フリーフォーム

ラジオボタン・チェックボタン・数値などの回答形式や条件分岐などをつかって、自由に質問票を作成できます

生活時間調査

円形のインターフェースをつかって、労働時間や睡眠時間などの任意の項目を調査できます

PVT

客観的な覚醒度の指標として、Psychomotor Vigilance Taskを実施できます

フランカー課題

実行機能(行動抑制など)を反映する心理課題です。

nバック課題

ワーキングメモリーに関連する心理課題です。

jsPsych実行機能

jsPsychのカスタムスクリプトを実行し結果を記録する機能を開発中です。jsPsychで実現できるものなら何でも計測できるようになります。


その他の管理機能

参加者管理

大規模な調査では、参加者の管理だけでも一苦労です。疲労checkerでは参加者が多い調査でも効率的に調査が行えるように、参加者の登録に二つのルートを用意しました。代表URLを配布して参加者自身に登録いただくことも可能ですし、事前に参加者一覧をインポートして個人用のQRコードを作成し配布することも可能です。

LINE公式アカウントとの連携機能

また、大規模な調査では参加者への一斉配信(リマインダなど)に加えて、個人的な問い合わせについても担当者の負担が増えがちです。そこで、疲労checkerではLINE公式アカウントとのAPI連携機能を実装中です。

調査用にLINE公式アカウントを開設し参加者に友達登録してもらうことで、疲労checkerの管理画面から個人チャットをしたり、疲労checkerへの誘導リンクをLINE内に表示(リッチメニュー)したりすることができるようになる予定です。また、LINE社の提供するWEB画面を使うと、リマインダなどの一斉配信も友達(つまり調査参加者)へ簡単に送ることができます。

一般公開について

新しい疲労checkerは私たちが研究に使うだけでなく、企業の産業保健スタッフの方や研究者の方々に広く使っていただきたいと考え、準備を行っています。社員の疲労状態を定点的に観測したり、施策の効果を科学的に検証したりすることの一助となれば幸いです。

利用方法の解説や利用申請など、一般公開の準備が整いましたら当サイトにてお知らせいたします。

※ QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

西村 悠貴(にしむら ゆうき)
記事を書いた人

西村 悠貴(にしむら ゆうき)

過労死等防止調査研究センター(RECORDs)では、現場介入チームと心血管系チームに所属。専門分野は生理人類学・生理心理学。脳波などの生理指標を扱う実験系の専門性を生かして、夜勤・交代制勤務、長時間労働(運転)などに関する各種実験に関わっている。また、過労自殺事案の解析も担当していた。研究者になったきっかけは、ヒトがお互いに影響を与える背景や仕組みに興味を持っていたからである。オフの時は、自宅に小さなLinuxサーバーをおいて、おうちDXを目指して遊んで過ごしている。