連続深夜勤後に勤務間インターバルを延長する交替勤務スケジュールへの介入調査

連続深夜勤後に勤務間インターバルを延長する交替勤務スケジュールへの介入調査
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生体負担の高い連続夜勤に 勤務間インターバルを延長した介入シフトによって疲弊度が軽減生体負担の高い連続夜勤に
勤務間インターバルを延長した介入シフトによって疲弊度が軽減
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この研究から分かった事

  • 逆循環の3交替勤務に従事する交替勤務看護師を対象に、疲労度が最も高いという訴えが多かった2連続深夜勤から2連続準夜勤に入るシフトの組み合わせ(深-深-準-準)に焦点を当てて疲労回復に望ましい介入シフトの効果を4か月間の介入調査で検証した。
  • 介入シフトの内容は深夜勤から準夜勤の間に1日休日を入れてシフト(深-深-休-準-準)で、その際の勤務間インターバルは31時間から55時間に延長されたものであった。
  • 介入シフトは、介入前のシフトと比べて残業を含む労働時間や休日が増加するということはなく、休日の配置を変えただけの介入であった。それにも関わらず、介入シフトによって疲弊度やオフでは心理的に仕事から離れているという感覚(サイコロジカル・ディタッチメント)が改善した結果が得られた。
  • 本調査の介入シフトは休日の配置を変えるだけで実施可能なので、逆循環3交代勤務を導入している職場においては水平展開しやすい疲労回復に望ましいシフトであること考えられる。

目的

看護師への事前ヒアリング調査により、「深-深-準-準」のシフトの組み合わせで働く際の疲労度が高いということが示唆された。そこで、生体負担が特に大きいと思われる2連続深夜勤後に1日の休日を配置して勤務間インターバルの確保を念頭においた介入シフト「深-深-休-準-準」で、2か月間、働いた場合の疲労や睡眠、ストレス等を非無作為化クロスオーバー比較試験で検討することが本研究の目的であった。

方法

同じ1つの病棟で働く30名の看護師が調査に参加した(平均年齢±SD;28.2±5.9歳)。調査期間は2020年10月~2021年2月であった。参加者はA群、B群に分類され、A群は11~12月、B群は1~2月をそれぞれ介入条件として2か月間の新シフトを経験し、それ以外の2か月間は統制条件とした。病院の勤怠データ、疲労アプリ、疲労やストレスに関する心理指標、反応時間検査、マット型睡眠計、毛髪と唾液によるストレスの生化学的指標を用いて介入効果を検証した。データは基準値とした10月の値からの差分値を用いて条件と時期を要因としたマルチレベル分析により解析を行った。

結果

従来シフトの「深-準」に比べて、介入シフトの「深-休-準」で深夜勤から準夜勤までの勤務間インターバルは増加した(従来;29時間、介入;53時間)。それにより、その間の睡眠時間や回数も増えていたが、労働時間、休日数には違いはなかった。疲弊の指標(Vital exhaustion尺度)は統制条件に比べて介入条件において有意に疲弊度が低下しており、介入後2ヵ月目にその差は顕著だった。他の心理指標においても同様の傾向が見られた。しかし、ストレスの生化学的指標では両条件に有意差は検出されなかった。

考察

介入シフトは従来シフトに比べて疲弊、ストレス、眠気、睡眠等の心理・行動指標で介入の効果が認められた。一方、生理指標には明確な差が観察されなかった。その理由はサンプル数や測定回数等の問題によるものだと考えられるが、労働時間や休日数は変えずに休日の配置を変えただけで様々な指標に介入効果が観察されたことは看護師の疲労管理を考える上で特筆すべき結果であると考察されよう。

キーワード

勤務間インターバル、交替勤務看護師、深夜勤務、3交代逆循環、職場の疲労カウンセリング

出典

Tomohide Kubo, Shun Matsumoto, Shuhei Izawa, Hiroki Ikeda, Yuki Nishimura, Sayaka Kawakami, Masako Tamaki, Sanae Masuda (2022) Shift-work schedule intervention for extending restart breaks after consecutive night shifts: A non-randomized controlled cross-over study. Int. J. Environ. Res. Public Health 2022, 19(22), 15042.

https://doi.org/10.3390/ijerph192215042

久保 智英(くぼ ともひで)
記事を書いた人

久保 智英(くぼ ともひで)

過労死等防止調査研究センター(RECORDs)の上席研究員で、専門分野は産業保健心理学、睡眠衛生学、労働科学。労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の他、産業医科大学での職歴を持つ。フィンランド国立労働衛生研究所での客員研究員としての活動も経験。モットーは「やってやれないことはない、やらずにできる訳がない」。研究のイロハを教えてくれた師匠たちを尊敬している。