【令和3年度】 道路貨物運送業における精神障害等の事案の解析

  • 令和3年度
  • 茂木 伸之
  • 労災事案分析
  • ハラスメント
  • 精神障害

研究要旨

この研究から分かったこと

発症要因における交通事故への対応は、他の産業ではない事案と見られ、道路貨物運送業の精神障害等の特徴と考えられる。上司とのトラブルが認定理由ではないが、これが起因となる精神障害等の発症事案が見られた。また、運行パターンは、深夜・早朝時間帯に多いことが明らかになった。

目的

令和2年度の事案解析より、ドライバーの長時間労働が要因である事案のうち約30%が「入社時から長時間労働」であること判明したが、発症要因までは整理できなかった。そこでドライバーの精神障害等の発症要因について、労災認定に用いられた出来事より検討することを目的とする。また、精神障害事案の運行パターンを分析し、脳・心臓疾患の運行パターンとの相違を検証する。

方法

道路貨物運送業のトラックドライバー101名を対象とした。発症要因については、長時間労働が要因である事案とそれ以外の事案の出来事の件数、長時間労働が要因である事案に関連する長時間労働以外の具体的出来事の分析を行った。運行パターンについては、労働時間集計表と調査復命書より8つに分類し、記述統計を行った。

結果

長時間労働が要因である事案の出来事が72件、それ以外の事案の出来事が29件であった。それ以外の事案の出来事の内訳はケガ・事故事案等が21件、対人関係等が8件であった。ケガ・事故事案等は交通事故等の対応によるもので、その内容は、事故を起こしたことによる手当のカット等であった。また、長時間労働が要因である事案の出来事72 件のうち長時間労働以外の具体的出来事が51 件あり、その中で上司とのトラブルが21 件と最も多かった。運行パターンは、深夜・早朝出庫型・通常タイプ(22.8%)、夜勤型・通常タイプ(20.8%)の順に多かった。

考察

発症要因における交通事故を起こしたことに伴う手当のカット等は、給与の減額による生活不安から精神障害が発症した可能性が考えられる。対策として、会社による事故等への対応が必要と考えられる。上司による強い叱責・きつい口調等は直接の認定理由ではないが、これら上司とのトラブルが起因となる精神障害等の発症事案が見られた。このような上司とのトラブルの防止対策が必要であると考えられる。運行パターンは深夜・早朝出庫型・通常タイプ、夜勤型・通常タイプに多かった。脳・心臓疾患の運行パターンも深夜・早朝時間帯に運行が多いため、道路貨物運送業の認定事案では、深夜・早朝時間帯の運行が多いことが明らかになった。

キーワード

事故対応、パワーハラスメント、運行パターン

執筆者

茂木伸之

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