研究報告書

【令和3年度】 IT 産業における精神障害・自殺事案の解析

【令和3年度】 IT 産業における精神障害・自殺事案の解析
目次

研究要旨

この研究から分かったこと

IT産業においては、女性の割合が増えており、精神障害の要因としては、仕事内容・仕事量の(大きな)変化が主な要因であり、女性では、セクハラが増加傾向であった。IT産業においては、長時間労働に関連する負荷業務などの対策とともに、女性のセクハラ対策が課題であると考えられた。

目的

IT産業は過労死等が多発している業種とされており、平成22~30年度の過労死等の業種(大分類)別統計では、IT産業は精神障害の労災認定件数は238件で第8位、100万人あたり13.7人で第2位となっている。これまでの報告では、50歳未満の事案が約3/4を占め、うつ病エピソードの事案が3/4以上であり、死亡(自殺)の事案が3割を超えているとされている。本研究は、過労死等が多く発生していると指摘されているIT産業を対象に、精神障害の予防を目的とした詳細分析を行うものである。

方法

IT産業に相当するものとして、情報通信業を分析対象とした。これまでのデータベースに、直近4年間(平成27~30年度)のIT産業における過労死等事案を追記し、基礎集計を行い、さらに平成30 年の23件の調査復命書を精読し、性別、年齢、心理的負荷が生じた出来事などの分析を試みた。

結果

男性178件(74.8%)、女性60件(25.2%)と女性の比率の増加を認め、また年齢は30歳代の割合が79件(33.2%)と高かった。精神疾患名は、うつ病エピソードが150件(63.0%)と多かった。業務による心理的負荷では、「特別な出来事」の「極度の長時間労働」が37件(15.5%)、「恒常的な長時間労働」が65件(27.3%)であり、女性では「強姦等」が5件(2.1%)であった。「具体的出来事」は、「仕事の量・質」の類型のうち「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」が87件(36.6%)であった。一方で女性では「セクシュアルハラスメント(以下「セクハラ」という)。」が13件(5.5%)であり、増加傾向であった。

考察

IT産業においては、長時間労働の改善が課題であり、それらに関連する負荷業務の対策が必要である。また、環境変化に伴うメンタルヘルス対策の重要性も示唆された。さらに、女性のIT産業就労者に関しては、セクハラが増加傾向であったことから、セクハラ対策の推進が喫緊の課題であると考えられる。

キーワード

IT 産業、精神障害、メンタルヘルス

執筆者

髙橋有記

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