【令和4年度】 道路貨物運送業における精神障害等の事案の解析

  • 令和4年度
  • 茂木 伸之
  • 労災事案分析
  • 長時間労働
  • 精神障害

研究要旨

この研究から分かったこと

道路貨物運送業の長時間労働の要因は、運転業務では「入社時から長時間」、非運転業務では「配置転換・転勤」が多く、職種ごとの仕事内容に伴う危険要因を考慮した精神健康対策も必要と示唆された。

目的

平成22 年度から平成29 年度の8 年間のデータに平成30 年度及び令和元年度の2 年分のデータを追加したデータベースを構築し、更に未着手である非運転業務の職種別について検討を行うことを目的とする。

方法

平成22 年度から令和元年度の10 年間に支給決定された4,491 件の精神障害事案データベースを使用し、道路貨物運送業295 件、運輸に附帯するサービス業11 件、合計306 件(運転業務198 件、非運転業務108 件)を対象とした。分析項目は、基本属性、生存・死亡の件数、発症時・死亡時年齢、決定時疾患名、職種別の業務における心理的負荷(新基準)、労災認定事案の3 つの出来事、長時間労働の要因、非運転業務の長時間労働関連の具体的出来事、運行パターン、配送分類とした。

結果

労災認定事案の出来事では、「1 か月に80 時間以上の時間外労働を行った」が23.6%で最も多かった。労災認定事案の出来事は、運転業務では「他出来事」が「長時間」より約2 倍多く、非運転業務では3 つの出来事に大きな差はなく、倉庫職と管理職は「長時間」、事務職と運行管理は「長時間+他出来事」が多かったが、「他出来事」では、倉庫職の75%が事故、事務職の55.6%がセクシュアルハラスメントであった。長時間労働の要因で最も多かったのは、運転業務では「入社時から長時間」が30.6%、非運転業務では「配置転換・転勤」が22.8%であった。

考察

8 年間のデータに2 年分のデータを追加し、データベースを構築した結果、過去2 年分の報告と同様に長時間労働を要因とする事案が多い傾向であった。年度による差はあると考えられるが、精神障害等の防止においても長時間労働対策が必要であることが示唆された。非運転業務は長時間労働ではあるが、職種別に見ると、倉庫職は事故関連が見られ、安全対策が必要と示唆される。運行管理は、直接出来事の評価ではなかったが、運転業務者と上司との板挟みによる負担等があり、点呼など運転業務者と直接接する職種である運行管理の特徴のひとつと考えられる。事務職の約半数が女性であってセクシュアルハラスメント事案が多くその対策が必要と示唆される。管理職は、配置転換・転勤と業務拡大・増加や経験のない業務による影響が、長時間労働の要因のひとつとなったと考えられる。

キーワード

運転業務、非運転業務、長時間労働

執筆者

茂木伸之

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