研究報告書

【令和4年度】 過重労働の生体負担を評価するバイオマーカーの検討-看護師とトラックドライバーを対象とした研究の再分析-

【令和4年度】 過重労働の生体負担を評価するバイオマーカーの検討-看護師とトラックドライバーを対象とした研究の再分析-
目次

研究要旨

この研究から分かったこと

交替勤務に従事する看護師やトラックドライバーのデータを再分析した結果、唾液中CRP は、夜勤回数や仕事の負担感、睡眠時間、運行パターン等と関連していた。このことから、今後のデータの蓄積が求められるものの、唾液中CRP が過重労働による生体負担の評価指標として有用であることが示唆される。

目的

慢性炎症反応の指標として唾液中C 反応性蛋白(CRP)に注目し、看護師・トラックドライバーの2 つの労働者集団において、労働関連要因(シフトの違い、労働時間、睡眠時間など)との関連を探索的に検討することを目的とした。

方法

過去に報告された看護師とトラックドライバーの研究データを再分析した。看護師を対象とした研究(研究1)では、12 時間夜勤の看護師15 名、慢性期病棟の16 時間夜勤の看護師15 名が含まれた。トラックドライバーを対象とした研究(研究2)では、地場運行ドライバー34 名、長距離運行ドライバー54 名が含まれた。両研究ともに、採取した唾液からCRPを測定し、労働関連要因とCRP 値の関連を分析した。

結果

研究1 では、12 時間シフトと16 時間シフトの看護師のCRP 値に有意な差は認められなかったが、12 時間シフトの群では、仕事の量的負担の得点が高いほど(r = 0.52, p = 0.046)、また、夜勤回数が多いほど(r = 0.54, p = 0.038)、CRP 値が高いことが示された。研究2 では、地場のトラックドライバーは長距離トラックドライバーよりもCRP 値が高く(F (1.0/84.1) = 7.5, p =0.007)、地場のトラックドライバーでは、睡眠時間が短いほど休日明けの出庫時のCRP 値が高いことが示された(r = 0.40, p = 0.018)。

考察

看護師・トラックドライバーという2 つの労働者集団において、労働関連要因と唾液中CRP 値の関連を検討した結果、唾液中CRP は、夜勤の頻度、仕事の負担感、睡眠時間との関連が認められ、また、トラックドライバーにおいては、地場運行と長距離運行という働き方の違いによってもCRP 値の差が認められた。これらの結果は、唾液中CRP が過重労働の生体負担を評価する指標として有望であることを示している。今後、労働関連要因と過労死等を結びつける要因として慢性炎症のバイオマーカーについて、データの蓄積がさらに必要である。

キーワード

CRP、夜勤、ストレス

執筆者

井澤修平

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