【令和5年度】 医療従事者における精神障害・自殺事案の解析

  • 令和5年度
  • その他
  • 事案分析:精神障害
  • 重点業種
  • ハラスメント

研究要旨

この研究から分かったこと

医師においては、臨床研修医の精神的支援及び自殺対策が肝要である。看護師においては、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした看護師に対しての包括的な支援に加えてハラスメントへの対策も肝要である。

目的

医療従事者は、過労死等が多発している職種であり、医師においては、平成27 年度以降の5 年間に精神障害の認定事案が増えており、その約4 割が自殺事案であったと報告されている。看護師においては、およそ半数が利用者からの暴力(性的なものを含む)を受けていたと報告されている。本研究は、過労死等が多く発生していると指摘されている医療従事者を対象に、精神障害の予防を目的とした詳細分析を行うものである。

方法

対象とする職種は医療従事者のうち、医師・看護師(看護助手は除く)とし、それぞれの平成22~令和2 年度における11 年間の事案を加えたデータベース(医師31 件、看護師193件)を基に基礎集計を行い、さらに令和2 年以降の医師3 件、看護師42 件の調査復命書を精読し、性別、年齢、心理的負荷が生じた出来事などの分析を試みた。

結果

医師の精神障害事案は増加傾向であり、臨床研修医が14 件(45.2%)を占めていた。精神疾患では、適応障害が4 件(12.9%)である一方で、うつ病エピソードが16 件(51.6%)を占めていた。自殺事案は13 件(41.9%)であり、およそ半数が研修医の自殺事案であった。女性看護師においては、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」が72 件(45.9%)を占めていた一方で、「セクシュアルハラスメントを受けた」が17 件(10.8%)見られた。また看護師全体で、対人関係の類型である、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」と、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」、「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」が合わせて36 件(21.6%)を占めていた。

考察

医師においては、臨床研修医の精神的支援及び自殺対策が肝要である。そのためには、適応障害の段階での適切な環境調整や、精神科による治療的介入の必要性がある。看護師においては、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした看護師に対しての包括的な支援に加えて、ハラスメントへの対策も肝要であると考えられた。

キーワード

医療従事者、医師、看護師 

執筆者

髙橋 有記

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