【令和5年度】 脳・心臓疾患の過労死等事案における脳・心臓疾患既往者の実態に関する研究

  • 令和5年度
  • その他
  • 事案分析:脳・心疾患

研究要旨

この研究から分かったこと

今後、CVD 既往者への適切な就業上の措置(そのための医師への意見聴取)、CVD 発症者の主治医から事業場へ積極的な情報提供が必要である。また、既往後経過年数分析からは、発症から2 年間は過重負荷によりCVD 発症リスク増加が示唆され、少なくともその期間は時間外労働の制限が望まれる。

目的

脳・心臓疾患(以下「CVD」という。)の既往歴は、CVD 発症の強いリスク因子である。業務上事案のうちCVD 既往者がどの程度存在しているか実態を明らかにすることを目的とする。また、CVD 既往によるCVD 発症リスクは既往からの経過年数により減衰するが、過重負荷の影響が既往後の経過年数と関連があるのか明らかにすることを目的とする。

方法

平成22 年度~令和元年度に認定された脳・心臓疾患の業務上2,505 件、業務外3,801件の事案を分析対象とした。CVD 既往歴有無、既往症の発症年を収集し、CVD 既往者の割合、既往歴の内訳について業務上・業務外別に集計した。CVD 既往者(業務上147 件、業務外353 件)について、性別、年代、職種をIPW で調整後、CVD 既往後の年数別の業務上または業務外に占める割合を算出し、比較した。 

結果

CVD 既往者の割合は業務上事案の5.9%であった。既往歴の内訳では、業務上・業務外ともに狭心症が40%前後、脳梗塞35%前後、心筋梗塞20-25%の順に多かった。業務外事案と比較し、業務上事案においてCVD 既往後0 年の発症例の割合は有意に少なかった。逆に、CVD 既往後2 年目の発症例の割合は有意に多かった。 

考察

割合は少ないもののCVD 既往歴はCVD 発症の高リスクである。これらの事案については、過重負荷の回避により、脳出血、心停止などの過労死等認定疾患への進展予防が可能な場合もあると考えられる。また、業務上事案においてCVD 既往2 年目の割合が業務外事案より有意に高く、過重負荷が発症リスクを押し上げた可能性が示唆された。 

キーワード

脳・心臓疾患、過労死、既往歴

執筆者

守田 祐作

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