【令和5年度】 情報通信業の労働者の労働環境要因と爪に含まれるコルチゾールの関連

  • 令和5年度
  • 井澤 修平
  • 重点業種
  • 現場介入研究
  • 長時間労働
  • ストレス
  • ツール

研究要旨

この研究から分かったこと

情報通信業の労働者を対象とした爪のコルチゾールの研究の概要と、現時点までに得られたオンライン調査の結果を報告した。情報通信業の労働者の環境要因、心理社会的ストレス、メンタルヘルスと爪のコルチゾールの関連が明らかになれば、この爪のバイオマーカーが過重労働による生体負担の評価指標として有用であることが示唆される。 

目的

本研究では、過労死等多発職種の一つである情報通信業の労働者を対象に、心理社会的なストレス、長時間労働、メンタルヘルスと爪のコルチゾールの関連を検討することを目的とする。本稿では、現在、実施中の本研究計画の概要とオンライン調査の結果を示す。 

方法

本研究は、オンライン調査と4 週間にわたる爪の採取から構成されており、2023 年10月から調査会社を通して実施されている。対象者は20 歳から49 歳の情報通信業の労働者1,000 名を予定している。オンライン調査では、人口統計学的要因、労働要因(職種、勤務シフト、労働時間など)、心理社会的要因(職業性ストレス、メンタルヘルス、ソーシャルサポート、情報通信業に特異的なストレッサーなど)についての項目を含めた。爪の採取については、10 本の手指の爪をジップロックに切りためるように依頼する。期間は4 週間とし、2 週間ごとに、その期間にのびた全ての爪をジップロックに採取するように求める。採取するためのジップロックは研究参加者の自宅に郵送し、採取された爪検体は、郵送で回収する手続きとした。得られた爪検体からコルチゾールを測定し、上述の労働要因や心理社会的要因との関連を検証する予定である。

結果

研究計画に基づき研究が開始され、現時点で870 名の対象者からオンライン調査のデータと爪試料を取得している。オンライン調査のデータを解析した結果、本調査では、情報通信業の中でも、情報サービス業の労働者が6 割以上を占めていた。また、週当たり60 時間以上の労働時間の労働者は比較的少なかったが、11 時間未満の勤務間インターバルを経験している労働者は2 割程度含まれていた。情報通信業の労働者に特異的なストレッサーとしては「突発的なトラブル処理作業」の経験が最も多かった。職業性ストレス簡易調査票で得られたデータについて、厚生労働省の基準に従って「高ストレス」に該当するものを算出した結果、16%とやや高い割合が示された。 

考察

現時点で得られたオンライン調査のデータから、本調査に参加した労働者の人口統計学的要因、労働要因、心理社会的要因が示された。今後、これらの特徴と爪のコルチゾールの関連を検討する予定である。

キーワード

コルチゾール、爪、情報通信業

執筆者

井澤 修平

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