【令和5年度】 対策実装研究アクション4:生活習慣の改善の取組み

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  • 対策実装研究

研究要旨

この研究から分かったこと

多様な作業者が従事する建設現場をハブとする健康行動を促進する取組み事例が示された。こうした取組みの実装のための今後の課題が整理された。

目的

過労死等防止において健康的で安全に働くために労働者個人が自身の健康状態を理解し、体調悪化時には早期に休息をとるなど体調を整えるセルフケアが重要である。本研究では時間外労働の上限規制の適用が猶予され、2024 年4 月から上限規制が適用される建設業を対象に、建設作業員による実践を通して、自身による生活習慣の意識、把握、改善を支援するツールを開発し、建設業における過労死等の防止につながる生活習慣、睡眠習慣、及び働き方の改善を目指すことを目的とする。昨年度までのニーズ調査、予備的現場調査に続いて、本年度はトラッカーによる健康管理支援技術の適用とミニ講話による行動変容の促しを試行し、支援ツールの実装の方策を検討する。

方法

高層建築物の建設作業者23 名を対象として、睡眠の管理等の機能を有するアプリケーションをもつトラッカー(fitbitⓇ)を3 か月間(2023 年7 ~10 月)装着し、体調管理に利用した。調査期間中に健康管理に関するミニ講話を3 種のテーマで実施した。調査の開始時と終了時に生活習慣、トラッカーの利用状況、ミニ講話の有効性等に関するアンケート調査を実施した。 

結果

 所属が異なり、様々な専門技能を持って作業に従事する同一の現場のグループに対して、建設現場(サイト)をハブにした健康・行動変容を促す取組みの試行例となった。昨年度の別の現場の試行結果に基づいて改善を試みた取組みとなり、現場ごとの新しい取組みの設定と竣工時の総括と改善という介入と実装を進める事例となった。また、トラッカーの活用と健康講話を通じて各自の自主的な健康への取組みに関する知識を得る機会を提供できた。現場内、協力会社、家族への波及効果の可能性も示された。 

考察

本結果から以下の課題が示された。トラッカーの受容性や活用の程度には個人差があり、普及・実装を促進する方法の検討が望まれる。今回、対象労働者に外国人労働者がいたことから、外国籍の労働者は母国のサイトを利用してトラッカーを活用しており国際化と輸出管理の制約が研究データ取得を難しくしている面があった。介入効果の評価において、工期のフェズなどによる勤務状況の相違などの変動要因への対応が課題であった。また、トラッカー活用による健康管理においては、各協力会社の管理者・経営者の理解と参与が重要と思われた。今回は元請け現場監督者による調整などの協力によって介入が実現したが、現場監督者の負担となっている一面があったことも、現場をハブとする取組みにおける課題であった。

キーワード

生活習慣改善、自主性、アクション型

執筆者

酒井 一博

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