【令和6年度】精神障害事案における産業医等の関与に関する分析
研究要旨
この研究から分かったこと
産業医意見欄に対応内容が記載されていた調査復命書は支給事案・不支給事案とも1割未満であったが、不支給事案のほうが記載割合は高かった。記載内容としては労災請求前に作られた資料の転記が多かった。
目的
過労死等の事案における「職場の支援」に関しては、上司・同僚による支援に加え、産業医等の産業保健職による支援の状況も精神障害の発症や予防、悪化と関係している可能性が想定される。本分担研究では、過労死等申請事案の調査復命書における産業医の意見を記入する欄の情報を用いて、産業医等の関与について分析した。
方法
支給・不支給を合わせた平成30年度1,461件、令和元年度1,586件の調査復命書を対象に、産業医意見欄から産業医等による対応内容が読み取れた事案をカウントし、各年度で労働者数と支給・不支給の別で集計した。さらに、記載内容の探索的な検討を試みた。
結果・考察
産業医等による対応内容の記載割合は、各年度と支給・不支給の別において3.3〜6.5%(15〜30件に1件)、労働者数50人以上に限れば4.4〜9.9%(10〜23件に1件)の範囲であった。両方の年度において、支給よりも不支給の事案のほうが記載割合は高かった。記載内容としては、労災の請求前に作られた資料(例:医師による面接指導報告書の内容)の転記が、請求後に作られた資料(例:労働基準監督署が産業医に照会した内容)よりも多かった。
キーワード
過労死等、職場の支援、産業医
執筆者
田原 裕之