【令和6年度】トラック運送業における運行パターンの定量解析
研究要旨
この研究から分かったこと
2024年4月を境にドライバーの運行パターンには変化が生じており、時間外労働規制変更等の2024年問題は運行パターンにも現れている。ドライバーの健康管理、メンタルヘルス対策等の環境と職業性ストレスは、必ずしも大規模、中規模、小規模と企業規模順にはならない。
目的
過労死等脳・心臓疾患事案から得られた特徴的な運行パターンに基づいて、運輸事業者の運行の特徴や過重性について評価すること、及び、時間外労働規制等の制度変更が実施される2024年4月を境に運行パターンにどのような変化が生じているのか調査を行った。また、Web調査により、過労死等のリスクを低減させる条件や適切な管理方法を検討した。
方法
デジタルタコグラフ(以下「デジタコ」という。)データから運行を8パターン分類し、2019年4月~2022年6月と2023年6月~2024年6月の2期での運行パターンの比較分析、及び2024年4月前後の運行パターンの推移の評価を行った。また、Web調査により、職業性ストレス簡易調査票、所属企業及び個人の健康診断の実施・受診状況及び健康課題の相談窓口について調査し、事業者規模別に分析した。
結果
ドライバー個人の運行パターンは、従来同様、早朝時間帯に出庫するパターンが多くを占めるが、最近はその割合が約6割にまで減少しており、連続勤務型や短休息型の運行パターンが増加していた。しかしながら、2024年4月を境に運行パターンに変化が見られ、早朝出庫型不規則タイプのパターンで運行するドライバーが急増した。ドライバーの健康管理、メンタルヘルス対策等の環境は、企業規模により相違があり、職業性ストレスは必ずしも大企業で少ない結果とはならなかった。
考察
トラック輸送に関連する諸課題の表出や、その対応により、2024年4月を境に運行パターンには変化が生じており、今後のパターン解析により実態を明らかにできるものと思われる。また、多面的なドライバーの健康管理の実態把握と対策案が必要である。
キーワード
デジタルタコグラフデータ、運行パターン、2024年問題
執筆者
酒井 一博