【令和6年度】心理社会的ストレスを評価するバイオマーカーの検討:情報通信業の労働者のいじめの体験と爪コルチゾールの関連

  • 令和6年度
  • 井澤 修平
  • 重点業種
  • 現場介入研究
  • ストレス
  • ツール
  • ハラスメント

研究要旨

この研究から分かったこと

本研究では、いじめを体験している情報通信業の労働者は、爪コルチゾールの値が高いことが示された。心理社会的ストレスによる慢性的な生体負担を評価するバイオマーカーとして、爪コルチゾールが有望であることが示唆された。

目的

爪には過去数か月にわたって体内で分泌されたコルチゾールが蓄積されており、慢性的なストレスを評価する指標として注目されている。本研究では、過労死等多発職種の一つである情報通信業の労働者を対象に、心理社会的なストレスとしていじめの体験をとりあげ、爪に含まれるコルチゾールとの関連を横断的に検討することを目的とした。

方法

本研究は、オンライン調査と4週間にわたる爪の採取から構成されており、2023年10月~2025年5月に調査会社を通して実施された。対象者は20歳から49歳の情報通信業の労働者であり、爪のコルチゾールの測定が完了し、外れ値などを除外した725名のデータが解析の対象となった。オンライン調査では、人口統計学的要因や労働要因に関する設問とあわせて、新職業性ストレス簡易調査票より抜粋したいじめに関する項目を含めた。具体的には、「職場で自分がいじめにあっている(セクハラ、パワハラを含む)」という設問に対して、「そうだ」「まあそうだ」「ややちがう」「ちがう」の選択肢で回答を求めた。

結果

いじめの体験の設問に対して、「そうだ」と回答した労働者は12名(1.7%)であった。交絡要因を調整した共分散分析を実施したところ、「そうだ」を選択した人は、「ややちがう」「ちがう」を選択した人よりも爪コルチゾールの値が高いことが示された。

考察

いじめを体験している労働者では、爪コルチゾールの高いことが示された。いじめによる心理社会的ストレスの生体負担が爪コルチゾールに反映されたと解釈できる。

キーワード

爪コルチゾール、ストレス、情報通信業

執筆者

井澤 修平

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