【令和7年度】脳・心臓疾患の過労死等事案における認定要件別の病態に関する研究~異常な出来事に着目して~

  • 令和7年度
  • その他
  • 事案分析:脳・心疾患
  • 心血管系負担

研究要旨

この研究から分かったこと

過労死等の認定要件ごとに発症する脳・心臓疾患の特徴が異なることが示された。特に「異常な出来事」では暑熱環境を背景とした脱水・血液濃縮が関与し、脳梗塞と心筋梗塞が多かった。一方、「長期過重」ではくも膜下出血や心停止が多く、過重負荷の種類により病態が異なる可能性が示唆された。

目的

本研究では、過重労働による脳・心臓疾患の発症メカニズムが、労災認定基準における「長期過重」「短期過重」「異常な出来事」の要件ごとに異なる可能性に着目し、それぞれの要件で特徴的な病態を明らかにすることを目的とした。

方法

過労死等データベースに登録された脳・心臓疾患事案6,611例を対象とした。診断名、年齢、性別、業種、喫煙・飲酒、既往歴、認定要件などを収集した。認定要件別の疾病割合をχ²検定で比較し、異常な出来事の類型別分析にはFisherの正確確率検定を用いた。「異常な出来事」については、その5類型(重大事故、精神的負荷の高い事故処理、生命の危機、消火・除雪作業、暑熱・寒冷・温度差)毎の認定疾病との関連を分析した。さらに、関連が示唆された認定疾患については属性の影響を調整するためロジスティック回帰分析を行った。

結果

「異常な出来事」では心筋梗塞(28.0%)と脳梗塞(22.0%)の割合が多く、特に「暑熱・寒冷・温度差」の類型に該当する事案でその傾向が顕著であった。ロジスティック回帰分析でも「暑熱・寒冷・温度差」の類型が脳梗塞(OR:4.55;95%CI:2.18-9.50)及び心筋梗塞(OR:2.74;95%CI:1.31-5.74)と有意に関連した。一方、「長期過重」ではくも膜下出血(17.9%)と心停止(14.1%)が多かった。「短期過重」では特異的な疾患との関連は認められなかった。

考察

我々がこれまで分析してきた「長期過重」と異なり、「異常な出来事」では脳梗塞・心筋梗塞が多かった。その背景には、暑熱環境による脱水・熱中症による血液粘稠度上昇、全身炎症、血管内皮障害などが関与し、脳心臓血管に血栓形成を促進する病態が考えられる。これは従来の過労死等発症メカニズムでは十分に想定されてこなかった病態であり、過労死等予防策の新たな視点を提供するものと考えている。

キーワード

過労死、異常な出来事、熱中症

執筆者

守田 祐作

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