【令和7年度】精神障害の労災認定事案におけるいじめ・暴力・ハラスメント―令和4年度・5年度カスタマーハラスメント事案の分析―

  • 令和7年度
  • 木内 敬太
  • 事案分析:精神障害
  • ハラスメント

研究要旨

この研究から分かったこと

令和5年度のカスハラ認定事案の多くは「暴行・脅迫」を伴っていた。「セクハラ・わいせつ」など、一部の第三者による加害は別の出来事として認定されていた。年齢、性別、業種、出来事の発生時間帯・場所、勤務開始からの期間、加害者の種別などから、焦点を絞った対策が有効な可能性がある。

目的

本研究の目的は、令和4年度と令和5年度の精神障害に関する労災認定事案のうち、カスタマーハラスメント(カスハラ)に関する事案の特徴を検討することである。

方法

令和4年度に支給決定された事案のうち、カスハラが含まれる可能性のある事案220件から、職場外の第三者からの加害行為全般が認められた事案を抽出し、分析対象とした。また、令和5年度に支給決定された事案のうち、カスハラ、つまり、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」が認められた事案60件(心理的負荷の強度は「中」6件、「強」54件)を分析対象とした。

結果

カスハラの種類(重複あり)は、令和4年度が暴行・脅迫61.4%、暴言・嫌がらせ30.1%、セクハラ・わいせつ30.1%、令和5年度が暴行・脅迫73.3%、暴言・嫌がらせ48.3%、セクハラ・わいせつ6.7%であった。両年度とも発症年齢は40歳前後で女性が約8割、医療・福祉が中心で、職種は専門的・技術的職業従事者が最多、疾患は重度ストレスへの反応および適応障害が中心であった。令和5年度は医療・福祉の比率が高く、金融・保険、宿泊・飲食サービスは少なかった。令和5年度では、発生場所は職場61.7%に加え、個室・密室18.3%、訪問先15.0%が含まれ、夜間・夜勤帯が約15%あった。加害者は顧客・第三者66.7%が最多で、保護者・家族15.0%、精神疾患・認知症15.0%、子供3.3%が続いた。勤務開始から発生までの期間は45.0%で判明し、1年目(20.0%)が最多で2〜3年目が続き、その後は減少した。

考察

カスハラ事案の多くは、暴行・脅迫であり、心理的負荷の強度は「強」と評価されていた。第三者からの加害であっても、セクハラ・わいせつのみの事案は「セクシュアルハラスメントを受けた」など、カスハラ以外の出来事として認定されることが多く、この違いが年度間の差に表れていた。40歳前後の女性、医療,福祉業、特定の時間帯(夜間/夜勤)や、場所(個室・密室、訪問先、屋外)、勤務開始後3年以内、特定の対象(保護者/家族、精神疾患/認知症、子供)など、カスハラが生じうる勤務に焦点を絞った対策がまず必要と考えられる。

キーワード

いじめ・暴力・ハラスメント、カスタマーハラスメント、対人関係の問題、暴行、セクシュアルハラスメント

執筆者

木内 敬太

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