【令和7年度】精神障害の過労死等認定事案における職場の支援に関する分析
研究要旨
この研究から分かったこと
発症前の被災者が職場関係者に対し相談行動を行っていたこと、被災者以外の他の者も、事象に関して心理的負担を感じていた可能性があること、そして、事業場は一定の支援を試みたにもかかわらず、被災してしまったケースが存在したことが明らかになった。
目的
精神障害の労災認定では「業務による心理的負荷評価表」に基づく判断が中核であるが、職場の支援・協力が欠如した状況であることは、総合評価を強める要素となることが明確化された。本研究は、認定事案における職場支援の評価実態を探索的に把握し、併せて被災者の相談行動と職場の認知状況を検討することを目的とした。
方法
令和4年度の精神障害認定事案710件の調査復命書をコード化し、相談行動、相談先、出来事、職場の認知、発症前後の支援を集計した。
結果
相談行動の記載は204件(28.7%)で、相談割合は20代まで34.4%、50代22.7%であった。相談先は延べ223件で、管理職・上司73件(同僚経由含め76件)が最多、次いで事業場31件(取締役以上の者、相談窓口、人事総務担当者、労働組合、関連会社等含め74件)であった。パワハラでは他者の面前における叱責等46件、他者も目撃・経験36件、目撃した他者の心理的負担18件が認められた。発症前支援の記載は142件で、「相談しても適切な対応がなく改善せず」60件(対応せず5件を加え65件)が最多であった一方、業務環境調整12件、加害者処分10件、口頭注意7件等もあった。発症後支援は78件で、処分に関する記載が43件(懲戒解雇等7件、降格・減給等36件)を占め、業務環境整備7件もみられた。
考察
①相談は3割弱にとどまり、声を上げにくい職場では支援が得られにくい可能性が示唆された。②対人関係・ハラスメントは周囲も認知・負担を受け得るため、目撃者を含む早期介入が必要であることが確認された。③「相談しても改善しない」記載が多く、相談受付から是正までの組織手続きの実効性が対策の要であることが推測された。
キーワード
職場支援、精神障害、労災認定、調査復命書
執筆者
吉川 徹