【令和7年度】精神障害の労災認定事案における業務による心理的負荷となる出来事の分析
研究要旨
この研究から分かったこと
労働者の健康確保のためには、心理的負荷に関わる出来事の特性をふまえて、その予防策を考案する必要がある。
目的
精神障害の労災認定事案を対象に、業務による心理的負荷となる出来事について、性・年齢階級や業種・職種の面から見た発生傾向、経年変化、時間外労働との関係、発生時期を分析し、労働者の健康悪化をもたらした勤務状況を多角的に考察する。
方法
平成24年度~令和4年度における精神障害の労災認定事案5,805事案を分析対象とした。出来事は厚生労働省の記録をもととし、性・年齢階級や業種、職種、時間外労働時間数との関係で、出来事の分布状況及び平均変化率を分析するとともに、発病年月日と評価期間の情報をもとに出来事の発生月を推定し、出来事類型との関係を分析した。
結果
心理的負荷となる出来事の発生状況は、性・年齢階級や業種、職種によって異なる。職種との関係では、建設・採掘従事者、生産工程従事者、農林漁業従事者、運搬・清掃・包装等従事者における「事故や災害の体験」、事務従事者における「セクシュアルハラスメント」、管理的職業従事者における「役割・地位の変化等」、「極度の長時間労働」、「仕事の失敗、過重な責任の発生等」等が、全体分布と比較したときに顕著な過剰が認められた。中分類・小分類レベルにおいても、出来事によって発生件数の多い業種・職種の特徴が確認された。経年変化では、出来事の年平均変化率で見ると「セクシュアルハラスメント」の増加が著しい(+10.1%)。属性別では、女性(+8.6%)や、「医療、福祉」(+12.6%)等の業種、「サービス職業従事者」(+7.3%)等の職種で支給決定件数の増加が著しい。時間外労働との関係では、「仕事の量・質」事案のほか、「役割・地位の変化」や「対人関係」の事案の一定割合が平均時間外労働月80時間以上である。時間外労働月80時間以上の事案の年平均変化率は減少傾向にあり(-2.2%)、「その他」の事案の増加が顕著である(+16.0%)。さらに、出来事の発生月は、「極度の長時間労働」は12月等で発生割合が相対的に高く、「役割・地位の変化」は4月、「パワーハラスメント」は6月に多い等、季節的な特徴が確認された。
考察
精神障害の労災認定件数が増加傾向にある中、被災者属性や仕事内容によって、心理的負荷をもたらす出来事の内容は異なる。また、経年変化からは、労災認定事案の質的変化が確認された。また、時間外労働が出来事として認定されていなくても、恒常的長時間労働等によって健康悪化がもたらされたケースも一定程度あると示唆された。また、出来事には、一定の季節性がうかがえた。
キーワード
精神障害の労災認定事案、心理的負荷となる出来事、時間外労働
執筆者
高見 具広