【令和7年度】情報通信業の労働者における爪コルチゾールと抑うつの関連:1年間の追跡調査
研究要旨
この研究から分かったこと
情報通信業の労働者において、慢性的なストレスの指標である爪コルチゾール値が高いと、1年後に抑うつが高くなることが示された。
目的
爪には過去数か月にわたって体内で分泌されたコルチゾールが蓄積されており、慢性的なストレスを評価する指標として注目されている。本研究では、過労死等多発職種の一つである情報通信業の労働者を対象に、爪コルチゾールが1年後の抑うつを予測するかを検討した。
方法
1年の間隔で2回のオンライン調査を実施し、また、1年目の調査の際に、爪の採取を実施した。対象者は20歳から49歳の情報通信業の労働者であり、本報告書では、2回の両方の調査に参加し、かつ、ステロイド軟膏の日常的な利用がなく、爪のコルチゾールの測定が完了した549名のデータが分析対象となった。オンライン調査では、人口統計学的要因や健康関連変数を問う設問に加えて、抑うつを評価するために、PatientHealthQuestionnaire-9(PHQ-9)への回答を求めた。爪の採取に関しては、4週間にわたって10本の手指の爪をチャック付きビニール袋に採取させ、郵送で提出するように求めた。
結果
2年目の調査時に、PHQ-9のカットポイントの10点以上を示す抑うつの高い労働者は87名(15.8%)であった。抑うつの高い労働者では、抑うつが低い労働者と比較して、1年目の爪コルチゾール値が高かった(t(547)=2.41,p=0.016)。説明変数を1年目の爪コルチゾール値、目的変数を2年目の抑うつとしたロジスティック回帰分析を実施したところ、1年目の爪コルチゾール値が高いと2年目の抑うつが高くなることが示された(aOR=4.20,95%Cl:1.11-15.90)。
考察
本研究では爪コルチゾール値が高いことは1年後の抑うつと関連することが示された。血液や唾液のコルチゾールを扱った研究では抑うつの予測については一貫性があまり認められていないが、本研究は、比較的慢性的なホルモンの状態を反映する爪試料を利用したため、このような結果が得られた可能性も考えられる。
キーワード
爪コルチゾール、抑うつ、情報通信業
執筆者
井澤 修平