【令和7年度】建設会社の土木現場における現場コミュニケーションと心理的安全性に関する調査研究
研究要旨
この研究から分かったこと
土木現場で働く労働者を対象に調査を行ったところ、立場の違いに基づく職場の心理的安全性や健康・生産性指標には有意な違いが見られなかった。一方で、現場コミュニケーションにおいては元請社員の発言が心理的安全性や報告の上げやすさと正負の両方向に影響することが示された。
目的
本研究では、日本全国の土木現場を対象に元請社員と協力会社職長間のコミュニケーションに関する質問票調査を行うことにより、現場コミュニケーションと心理的安全性、及び労働安全・労働衛生への影響を明らかにすることを目的とした。
方法
日本全国の土木現場49か所で働く労働者(元請社員・協力会社職長)を対象に、匿名の社内調査を実施した。質問票はデモグラフィックデータ、勤怠や睡眠に関する質問に加えて、現場の雰囲気やコミュニケーションに関する設問で構成されていた。さらに、労働衛生や生産性に関する指標として、心理的安全性、ワークエンゲージメント、うつ症状リスクや幸福度に関する設問にも回答を得た。統計解析では、群(元請社員・協力会社職長)間の比較を線形混合モデルで行った。また、職場の心理的安全性得点や安全・品質・工程に関する報告の上げやすさをアウトカムとする回帰分析で、現場でのネガティブ・ポジティブな発言との関連を線形混合モデルや累積リンク混合モデルを用いて検証した。
結果
調査に参加した861名のうち、739名が回答の研究利用に同意した。元請社員は協力会社職長よりも労働時間が長く、睡眠時間が短い傾向があった。現場コミュニケーションではネガティブな発言もポジティブな発言も元請社員の方が、経験率が高かった。心理的安全性をアウトカムとする解析では、元請職員のネガティブあるいはポジティブな発言が有意な関連を示した。また、安全等の報告意向と関連する要因に関する解析でも、元請職員のネガティブな発言が特に顕著な関連を示した。
考察
立場の異なる労働者が一緒の現場で働く中で、契約上立場が上になりやすい元請社員の持つ影響力が高いことが改めて示された。また、ネガティブな発言が負の影響をもたらしやすい一方で、ポジティブな発言が心理的安全性や報告の上げやすさと関連することが示されたことから、ポジティブな発言が持つポジティブな効果についての周知が求められる。
キーワード
心理的安全性、職場コミュニケーション、建設労働者
執筆者
西村 悠貴