【令和7年度】「過労徴候しらべ改訂版」の妥当性検証―連休中の休息、睡眠の質、労働時間との関連と分類性能の観点から―
研究要旨
この研究から分かったこと
過労徴候は、年代、連休の休息の質、睡眠の質が高いほど低く、週の労働時間が長いほど概ね高かった。睡眠の質に関して、一部のカットオフで過労徴候は心理的ストレス反応よりも有意に高い弁別力を示した。週の労働時間77時間以上のカットオフにおいて、過労徴候及び心理的ストレス反応は一定程度の弁別力を示した。
目的
本研究の目的は、過労徴候しらべ改訂版の妥当性を、日本の労働者を対象としたウェブ調査の結果に基づいて、連休中の休息、睡眠の質、労働時間との関連と分類性能の観点から検証することである。
方法
令和6年1月に日本の労働者を対象にウェブ調査を行い、得られたデータ6,936件を分析した。まず、年齢、連休の休息の質、勤務前夜・休日前夜の睡眠の質、週の労働時間の水準ごとに過労徴候しらべ改訂版の合計点の差を検討した。次に、各変数を目的変数として、複数のカットオフを定めて二値変数とし、過労徴候、心理的ストレス反応、リカバリー経験による分類性能をAUC(Area Under the Curve、曲線下面積、以下「AUC」という。)を求めて比較した。
結果
過労徴候しらべ改訂版の各項目は全体に「まったくなかった」が最多であり、高頻度回答は少なかった。過労徴候は、年代、連休の休息の質、勤務前夜・休日前夜の睡眠の質が高いほど低い傾向を示し、週の労働時間が長いほど概ね高い傾向を示した。AUCは、年齢区分では全体に低めであり、休息の質では低いカットオフで心理的ストレス反応が過労徴候より高く、過労徴候はリカバリー経験より高かった。睡眠の質では過労徴候と心理的ストレス反応が概ね高く、リカバリー経験は相対的に低かった。週労働時間ではAUCは全体に低めであったが、77時間以上の区分では過労徴候と心理的ストレス反応のAUCが0.7を上回った。
考察
過労徴候が回復状態(休息・睡眠)と一貫して関連し、労働時間の極端な増大局面では分類性能も高まりうることを示した。休息の質の低下は、心理的ストレス反応が相対的に捉えやすく、睡眠の質の低下は過労徴候が有用となる局面があることが示唆された。過労の早期把握では単一尺度に依存せず、目的に応じて尺度を使い分けて、併用する運用が有効であると考えられる。
キーワード
過労、過重労働、患者報告式アウトカム尺度
執筆者
木内 敬太