【令和7年度】ドライバーの中枢神経系活動に対する休憩効果の検討:ドライビングシミュレーター実験に関する報告
研究要旨
この研究から分かったこと
長時間運転を模した実験室実験を行った結果、休憩の長さにかかわらず、休憩を分割して取得することが長時間運転課題中の注意資源の配分に影響するかもしれない。
目的
運輸業は過労死等のリスクが高く、勤務時間の長さと休憩不足がその主要因として指摘されている。さらに、長時間労働で蓄積する疲労は注意力を低下させ事故のリスクを増大させる。そこで、本研究では職業ドライバーにとって適当な休憩条件の探索を目的として、運転課題中の休憩の長さ及び分割の有無が、運転者の注意資源配分に与える影響を実験的に検証することを目的とした。
方法
健康な男性47名を対象に、ドライビングシミュレーターを用いた運転課題を実施した。参加者は、休憩の長さ(30分あるいは60分)と分割の有無からなる4群のいずれかにランダム割り付けされて実験に参加した。運転課題は市街地の運転1時間と高速道路の運転1時間からなる運転セッションを3セッション実施し、第2セッションと第3セッションの間に昼休憩を取得した。休憩分割がある群では、第1セッションと第2セッションの間にも10分の休憩を取得した。市街地、高速ともに運転開始から20分程度たった時点でNovelty auditory oddball paradigmという音刺激を用いた実験構成を使用して脳波の事象関連電位(ERPs)を計測した。ERPsは、休憩の長さ、分割、セッション(3水準)とその交互作用を固定効果とする混合効果モデルで検定した。
結果
P3a振幅は休憩の分割によって有意に低下したが、長さ、セッション、それらとの交互作用は有意な効果を示さなかった。N1潜時ではセッションと休憩分割の交互作用が有意であり、第3セッションで有意に潜時が延長していた。
考察
休憩の分割がP3a振幅やN1潜時と関連していたことから、新奇刺激に対する注意資源の配分が十分に行われず、運転課題中の音刺激に対する注意の振り向けや感覚刺激の検出が抑制された可能性がある。一方で本研究の限界点として、実験デザインに起因するバイアスが結果に影響した可能性にも留意が必要である。今後はより多角的な解析を通して、職業ドライバーにとってより良い休憩の取り方について更なる解析を行っていく。
キーワード
注意資源、運輸業、休憩
執筆者
西村 悠貴