【令和7年度】過労死関連疾患の予防対策に向けた体力評価研究

  • 令和7年度
  • 松尾 知明
  • 実験研究
  • 長時間労働
  • 体力
  • ツール

研究要旨

この研究から分かったこと

①勤務時間が短くてもCRFが低ければ脂質代謝異常の発症リスクは高くなり、勤務時間が長くてもCRFが高ければ発症リスクは低くなる可能性がある。②体力の精神的要素の評価にOMFQが活用できる見込みである。

目的

本チームは、疾病発症への影響を労働時間(外的因子)と体力(内的因子)の双方から分析するための疫学調査研究(J-NIOSH体力コホート研究)に取り組んでいる。これまでの研究では、体力の身体的要素として心肺持久力(CRF)に着目し、その簡便な評価法として質問票(WLAQ)を開発したうえで、横断的な検討を行ってきた。本年度は、これまでの追跡データを整理し、縦断的な分析を行った。また、本年度は、体力の精神的要素(mental fitness : MF)をコホート研究に含めることを目的に、質問票(OMFQ)の開発に取り組んだ。本稿では、それらの研究の概要と分析結果の一部を報告する。

方法

現段階において、ベースライン時の勤務時間とCRF値が得られた対象者は5,800人程であり、追跡期間は最大6年である。このデータセットを用いて、脂質代謝異常の新規発症をアウトカムとし、勤務時間とCRFを組み合わせた6群により、Cox比例ハザード分析を行った。OMFQ開発研究では、COSMINガイドラインに準拠する方法で、質問項目の考案と、その妥当性や信頼性、反応性等の検証を行った。

結果

脂質代謝異常に関する分析では、基準群(CRF高×勤務短)に対し、CRF低×勤務短群では発症リスクが有意に高く、CRF高×勤務長群ではリスクが有意に低かった。開発されたOMFQは、“オフェンシブ”(一歩踏み出すための気力:18項目)と“ディフェンシブ”(踏みとどまるための気力:12項目)から成る質問票である。構造的妥当性、内的一貫性、信頼性ともCOSMIN基準を満たし、1~2年の間隔をあけて行った反応性の検証では、OMFQスコアの上昇がエンゲイジメントやパフォーマンス向上と関連していた。

考察

J-NIOSH体力コホート研究では、労働時間などの外的因子が疾病発症に及ぼす影響を、労働者自身の状態(内的因子)を考慮したうえで検討しようとしている。質問票の開発や研究コホートの構築により、検討に向けた基盤が整いつつある。追跡調査のデータをさらに蓄積し、詳細な分析に取り組みたい。

キーワード

体力、心肺持久力、メンタルフィットネス、労働時間、コホート

執筆者

松尾 知明

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