【令和3年度】 勤務時間外の仕事の連絡と在宅勤務頻度がIT 労働者の心身に及ぼす影響
研究要旨
この研究から分かったこと
勤務時間外における仕事の連絡の悪影響は在宅や出社という勤務のあり方により異なった。とりわけ、出社勤務で勤務時間外での仕事に関する頻繁な連絡がある場合、オフでも仕事に心理的に拘束され、精神健康度が悪化する可能性が示された。
目的
本研究の目的は、勤務時間外の仕事の連絡と出社・在宅勤務という勤務のあり方が労働者の心身に及ぼす影響を検討することである。
方法
本研究は、スクリーニング調査、本調査、事後調査からなっており、2021 年10 月~12月に実施した。スクリーニング調査を実施した後、一定の基準(業種が情報通信業等)を満たした100 名が本調査に参加した。本調査において、参加者は、就床前と起床後の主観調査、客観的睡眠測定を毎日実施し、特定日の就床前に反応時間検査を実施した。その後、事後調査として、基本属性の他、K6(心理ストレス)、職業性ストレス簡易調査票(疲労、抑うつ感等)、WFun(健康問題による労働機能障害の程度)、リカバリー経験尺度等への回答を求めた。最終的に、98 名(平均45.3 歳、標準偏差9.3、男性80 名)分のデータを得た。分析として、勤務時間外の仕事の連絡頻度(週数回、毎日1 回以上)と、在宅勤務の頻度(出社勤務が多い、在宅勤務が多い)の2 要因で参加者を分類し、K6 等を従属変数とする2 要因分散分析を行った。
結果
在宅勤務頻度と連絡頻度の交互作用がK6 と抑うつ感に見られた。下位検定の結果、連絡頻度高群において、在宅頻度低群は高群よりK6 得点が高く、抑うつ感が強かった(ps<0.05)。また、在宅頻度低群において、連絡頻度高群は低群よりK6 得点が高かった(p=0.04)。連絡頻度の主効果の傾向が心理的距離と身体愁訴に見られ(ps<0.10)、連絡頻度高群は勤務外において仕事との心理的距離が取れず、身体愁訴が高かった。在宅勤務頻度の主効果がWFun、疲労、身体愁訴に見られ(ps< 0.05)、在宅頻度高群は疲労や身体愁訴は低いが労働機能障害の程度が高かった。
考察
勤務時間外における仕事の連絡の悪影響が、在宅あるいは出社という勤務のあり方によって異なった。在宅勤務と比べ、出社勤務には通勤時間がかかるため、勤務間インターバル内の余暇や睡眠時間が短くなり、疲労回復が不十分となる可能性がある。これに加えて、勤務時間外の仕事の連絡によりさらなる疲労回復の阻害が生じ、精神健康等が悪化すると考えられる。
キーワード
つながらない権利、在宅勤務、心理的距離
執筆者