研究報告書

【令和3年度】 精神障害の労災認定事案におけるいじめ・暴力・ハラスメント並びに出来事と 発症前6 か月の時間外労働の類型に関する研究

【令和3年度】 精神障害の労災認定事案におけるいじめ・暴力・ハラスメント並びに出来事と 発症前6 か月の時間外労働の類型に関する研究
目次

研究要旨

この研究から分かったこと

発症前6 か月の時間外労働は短時間外労働、中時間外労働、長時間外労働、超長時間外労働の4 群に分けられる。いじめ・暴力・ハラスメント関連の事案は、短時間外労働に多く、時間外労働や過剰な業務負荷が関連するのは20%程度。いじめ・暴力・ハラスメントは、死亡事案では少ない。

目的

本研究の目的は、精神障害に関する労災認定事案について、認定された出来事の類型と発症前6 か月の時間外労働の類型の関連性の観点からいじめ・暴行(暴力)・ハラスメントに関連した事案の実態を明らかにすることである。

方法

平成23~29年度に支給決定された精神障害事案2,923件及び、そのうち発症前6か月の時間外労働の情報が得られた2,441件を分析対象とした。発症前6か月の時間外労働について、その強度のパターンを潜在クラス分析によって分類した。ロジスティック回帰分析を用いて、死亡事案で多く認められる事案の属性や出来事を検討した。いじめ・暴力・ハラスメント関連の出来事の組み合わせについて事例を踏まえて考察した。

結果

発症前6か月の時間外労働は、短時間外労働、中時間外労働、長時間外労働、超長時間外労働の4群に分類することができた。ロジスティック解析の結果、出来事の類型と発症前6か月の時間外労働の類型はいずれも、死亡事案との有意な関連は認められなかった。各出来事の有無については、特に、「同僚とのトラブルがあった」(OR(odds ratio): 3.79)、「会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをした」(OR: 3.41)の認定が死亡事案で多かった。

考察

年代、性別、業種、職種、疾患、認定された出来事など、事案の属性により、時間外労働の長さや死亡事案の多さが異なることが示唆された。いじめ・暴力・ハラスメントを伴う事案は全体的には短時間外労働であるが、一部は、長時間労働や仕事内容・量の変化や連続勤務と関連していると考えられる。また、いじめ・暴力・ハラスメントを伴う事案では、死亡事案の割合が少ないが、その理由については、今後詳細な検討が必要である。セレクションバイアスの影響も想定されることから、非認定事案を含めた検討、前向きの調査や実験など、異なるデザインの研究手法により、結果の再現性や因果関係の検証を行う必要がある。

キーワード

いじめ・ハラスメント・暴力、過労自殺、人間関係の問題

執筆者

木内敬太

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