研究報告書

【令和4年度】 夜勤・交替勤務看護師におけるシフト別のセルフモニタリング能力について

【令和4年度】 夜勤・交替勤務看護師におけるシフト別のセルフモニタリング能力について
目次

研究要旨

この研究から分かったこと

交替勤務に従事することは、ヒトが本来持つ生体リズムに逆らいながら働くことが求められる。これまでの研究で、こういった働き方による様々な安全・健康上のリスクが指摘されてきたが、自己のパフォーマンスを認知する心理的な機能にも影響があることが示された。

目的

逆循環の3 交替制勤務で働く病棟看護師のタスク成績及びタスク成績の自己評価を各シフトの退勤前に調べることで、生体リズムに反して働くことが看護師のセルフモニタリング能力へ及ぼす影響を検証することを目的とした。

方法

総合病院で働く病棟看護師30 名を対象とした調査研究を実施した。参加者は、調査期間中の毎退勤前に、持続的な注意を計測する精神運動課題とそのパフォーマンスを予想する主観評価を実施した。セルフモニタリング成績は、このパフォーマンス予想と実測した課題成績の差分によって評価した。統計検定は、シフト以外に先行覚醒時間や睡眠時間もモデルに組み込んで行った。

結果

深夜勤務帯で課題成績の自己評価が低下した一方で、実際の課題成績はシフト間で差がなかった。これは、特に深夜勤務後のセルフモニタリング能力が低下し、実態以上に悲観的なセルフモニタリングが行われたことを示す。先行覚醒時間や睡眠時間はセルフモニタリング成績に有意な効果を示さなかった。

考察

本研究から、疲労と関連する覚醒時間や回復と関連する睡眠時間よりも、生体リズムに反して働くことがセルフモニタリング成績と有意に関連することが示された。セルフモニタリング成績の低下は直ちに安全上の問題がある過大評価ではなく、自身の能力の過小評価によるものであったが、個人や組織の生産性低下につながる可能性がある。労働者やサービス受益者の健康と安全を確保するためには、ヒトの生体リズムの特性を考慮した勤務計画の策定が求められる。

キーワード

自己認知、交替勤務、医療従事者

執筆者

西村悠貴

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