【令和元年度】 過労死等事案における脳・心臓疾患の病態に関する研究

  • 令和元年度
  • 吉川 徹
  • 事案分析:脳・心疾患

研究要旨

過労死等データベース(脳・心臓疾患事案2,027件、自殺を含む精神障害事案3,011件、平成22年4月~平成29年3月の7年間)を用いて、過労死等データベース(脳内出血版)を作成した。脳・心臓疾患による過労死等における決定時疾患名として脳内出血に分類された事案は604件であった。これらの対象を用いて、性別、生死、業種、脳内出血の部位別(被殻出血、脳幹部出血等)解析を行った。その結果、死亡は110件(18.2%)で脳内出血全体の約2割を占めた。性別は男性が大多数(93.7%)であった。発症年齢は50~59歳代が最も多く(38.6%)、40~59歳代以上で全脳内出血事案の約8割を占めた。業種では、運輸業・郵便業が3分の1を占め最も多く、続いて卸売業・小売業、製造業であった。出血部位別の統計では、全体では被殻出血が半数(48.3%)を占めた。続いて視床出血(16.7%)、脳幹出血(14.4%)の順であり、これらを合わせると約8割が被殻・視床・脳幹出血であった。生存事案では被殻出血が55.3%と最も多いが、死亡事案では脳幹出血が35.5%と最も多かった。発症部位別統計では、右が36.9%で、左が40.6%と、やや左部位の出血が多い傾向にあった。労災認定理由では、「長期間の過重労働」が93.0%を占めた。短期間の過重業務は4%、異常な出来事への遭遇は3%であった。

今後、発症病態について一般患者のデータとの比較、循環器疾患の専門家との検討等が必要である。

執筆者

吉川 徹 

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