【平成28年度】 東日本大震災に関連した脳・心臓疾患の労災認定事案に関する分析
研究要旨
近年、わが国における地震・津波等、大規模災害における労働者の過重労働対策に関心が高まっている。そこで、東日本大震災に関連した過労死等事案について過労死等データベースを用いてその特徴と今後の震災関連過労死対策への示唆をまとめた。
平成22年1月から平成27年3月までのデータベースから東日本大震災の被災3県(岩手、宮城、福島)の脳・心臓疾患事案90事例から震災に関連していると判断される事例を抽出し、分析を行った。その結果、21件が該当した。認定事例はすべて男性で発症時平均年齢53.9(±8.6)歳で、業種、職種、認定疾患名は多岐にわたった。発症時期は、震災当日から1週間以内6件、1週間超え1か月以内3件、1か月超え6か月以内7件、6か月超え1年以内3件、1年を超えての発症は2件であった。また、異常な出来事への遭遇6件、短期間の過重業務2件、長期間の過重業務15件(負荷要因の重複2例含む)であった。これらのうち特徴的な7事例の概要を整理した。自然災害後の過重業務に関連した健康障害予防に関して、災害後の業務負荷と時間軸別の対応及び業種別の対応、事業継続計画における労働者の過重業務低減策の検討が、特に重要であると考えられた。