【令和元年度】 過労死等の防止支援ツールの開発 ―過労死等の防止に関わる対策研究の動向―

  • 令和元年度
  • 鈴木 一弥
  • 対策実装研究
  • ツール

研究要旨

目的

過労死等の防止を支援するツールを開発するため、労働安全衛生活動に関連して開発・公表されている国内外の学術情報を収集し、過労死等防止のために必要な支援ツールの対象、目的、形式等について検討した。

方法

医学関連文献データベースを用いて国内外の文献を収集した。文献検索は、過労死等防止に資する労働安全衛生管理に関する取り組みを促進・支援するためのシステムやツールに言及したキーワード(手段keyword(KW):"checklist"or"checkpoint"or"requirement"or"managementsystem"or"toolkit"or"toolkit"or"guideline"or"recommendation"or"managementstandard")を共通で使用し、介入対象や目的に関するキーワード(問題keyword(KW))として、過重労働と長時間労働、ストレス関連障害及びハラスメント等を使用した。手段KWと問題KWの論理積で文献データベース(MEDLINE®、PubMed)による検索を実施した。文献は原著、総説、資料等に加え、ILOやWHO等の公的機関から公開されているものも対象とした。抄録内容から具体的で体系的なシステムやツールの実際の使用、検証、開発あるいは論評をしている論文・資料を選択した。労働者個人の症状や就労状況のみを評価するツールは検索対象から除外した。心理社会的リスクのチェックを含むjobstressの評価ツールは、今回の採用の十分条件とはしなかった。これらの結果に基づき、今後の我が国での過労死等防止に関する研究開発に関する探索的な資料の検索も別途実施した。

結果

過労死等防止に資する支援ツールの開発にあたって、以下の3視点からの文献が整理された。(1)職種や現場の特性へ適合させる:業種や職種、国ごと、作業への適合が研究課題であった。現場に応じた評価と改善を同時に進める参加型チェックリストや、従業員の要望の調査に基づくツールの開発例があった。(2)改善の推進と実効性を高める:職場の組織・文化的状況とツールの適合性、改善の実行の推進とその実効性に関するツール開発や研究があった。人間工学的側面などの具体的な環境の改善を重視したツール開発例があった。(3)支援対象、評価対象の多様性を考慮する:マネジメントの支援、参加型の改善活動支援、産業医や開業医の支援、教育の支援などがあった。職場外を含めた多面的な対策例として、公共施設の健康支援機能をチェックするツールの開発例もあった。

考察

過労死等防止に資する具体的なアクションの実行・継続を支援するために、各現場の状況や意見に基づいた対策の検討ができる柔軟性のあるツール開発が重要である。簡便性を重視しての、個々の業種・職種などの特性の検討に基づいた職種特化型ツールの検討も考えられる。

執筆者

鈴木 一弥

PDF