【令和2年度】 運輸業における精神障害事案の解析-運転業務と非運転業務について-
研究要旨
道路貨物運送業は、脳・心臓疾患による労災請求件数、支給決定件数が業種(中分類)別で最も多いが、精神障害についても最近の10年間において請求件数、支給決定件数が共に上位3位以内であり、過労死等防止対策に加えてメンタルヘルスの対策も重要であると考えられる。そこで本研究では、運輸業、郵便業の中で中分類である道路貨物運送業に限定し、精神障害の特徴について明らかにすることを目的とする。
平成22~29年度に支給決定された精神障害3,517件から、道路貨物運送業・運輸に附帯するサービス業の237件を抽出し分析対象とした。分析は性別、生死、発症時・死亡時年齢、疾患名(ICD-10)、労災認定要因等について行った。職種はトラックドライバーとトラックドライバー以外である非運転業務について分析した。
その結果、男性が約90%とほとんどを占めており、労災認定事案からも男性職場であることが認められる。職種別の決定時疾患の心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、27件中24件がドライバーであった。事故や悲惨な体験に関連する件数は全体で24件であった。そのため、事故などに対する精神ケアも含めた対策が必要と考える。長時間労働による労災認定の出来事は、ドライバーの約50%、非運転業務の75%が該当し、また、ドライバーの約30%が入社時当初から長時間労働の要因に該当している。ドライバーの長時間労働は、運転労働以外に手待ち、荷役、付帯作業といった発・着荷主の現場での作業が要因になっており、発・着荷主の現場での作業時間の実態を明らかにする必要があると考えられる。非運転業務の長時間労働の大きな要因は、業務拡大・増加と配置転換・転勤であり、それぞれの事柄について検証する必要があると考えられる。道路貨物運送業の精神障害等の過労死等防止対策はドライバーとドライバー以外の職種それぞれ対策を分けて考えた方が良いと示唆された。