【令和2年度】 介護職員におけるトラウマティックな出来事に関する研究

  • 令和2年度
  • 吉川 徹
  • 事案分析:精神障害
  • 重点業種
  • ハラスメント

研究要旨

過労死等防止のための対策に関する大綱」で過労死等の多発が指摘されている業種・職種のうち、医療・福祉に着目した。医療・福祉の事案は精神障害事案が大半を占めており、その中でも最も多い職種が介護職員である。また、認定理由としては「悲惨な事故や災害の体験、目撃」が多かった。したがって、本研究では、トラウマティックな出来事を体験した介護職員に着目して、出来事が起こった背景を探索し、予防策を講じる手掛かりを得ることを目的とした。

分析の結果、これまで詳細が報告されていなかった介護職員におけるトラウマティックな体験をした事案の実態と背景要因の一端が明らかになった。トラウマティックな体験内容としては、半数以上が暴力等への遭遇であり、その大半が遭遇時に一人で助けが遅れるか来なかったという状況であることが分かった。また、暴力等の背景には認知症等や精神疾患等の症状があると推測される一方で、大半のケースでそうしたことが分からないままに被災していることも分かった。加えて、背景要因としては症状だけではなく、高齢者、障がい者ともに、「家に帰りたい」、「知らない人に触られたくない」、「人と関わりたい」というような利用者本人の希望や意思が根本にあるケースも少なくなかった。

今後の課題として、介護職員がより質の高いケアを提供でき、かつやりがいをもって安心・安全に働ける職場を作るためにも、トラウマティックな体験や不快な体験をした際のメンタルヘルスケア体制の充実や、予防のために必要な知識の取得機会、職場における知識の応用を後押しする仕組みの確立が求められる。

執筆者

吉川 徹

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