【令和2年度】 職場管理の観点から見た労災認定事案の検討
研究要旨
長時間労働等過重負荷による労災事故の予防に資するべく、職場管理における実務的課題及び法制度運用上の課題の提示に向けて行うものである。この際、既存のデータセットを基礎として新たな変数を整理するなどしたうえで、定量的検討を行った。また、抽出条件を絞ったうえで個別事案を取り上げて定性的検討も行った。
検討の結果、職位が上がると長時間労働など過重な負荷がかかること、実労働時間の客観的な記録方法であるタイムカードが活用されていても労働時間の長さには影響がないと考えられること、労働組合の存在は長時間労働の抑制に効果がある可能性があるものの、個別事案を見る限り労働組合は長時間労働・過重負荷の予防・抑制に関与していないこと、過半数従業員代表は36協定の締結に関与するのみで実質的に“代表”としての意義を果たしていないこと、36協定は長時間労働・過重負荷の予防・抑制に寄与していないことが分かった。
過労死・過労自殺等の労災事故の予防に当たっては、管理職をして管理業務を行わせるべきこと、またそのために職場において業務改善等を行う必要があること、タイムカード等客観的な出退勤管理方法を長時間労働・過重負荷の予防・抑制に活用すべきこと、労働組合はその存在意義たる労働条件の維持改善を果たすべく、長時間労働・過重労働の予防・抑制に取り組むべきこと、過半数従業員代表についてはその責務の重大さから本質的な“代表”として制度政策上位置付けるべく議論すること、使用者においては36協定を労働時間管理の自主的規制としてよく認識し適切に運用すべきこと、を結論として述べた。
執筆者
池添弘邦 、藤本隆史