【令和5年度】 脳・心臓疾患及び精神障害の過労死等事案の経年変化解析

  • 令和5年度
  • 佐々木 毅
  • 労災事案分析

研究要旨

この研究から分かったこと

過労死等の業務上事案数の増減に対する業種別件数並びに業務上と業務外事案の属性等の違いが分かった。

目的

脳・心臓疾患及び精神障害の過労死等事案について業務上及び業務外の過労死等データベースを構築・解析し、性別、発症時年齢、疾患名、業種、健康管理等並びに労働時間以外の業務の過重性(負荷要因、具体的出来事)の経年変化を検討することを目的とする。

方法

過労死等データベースは、厚生労働省が「過労死等の労災補償状況」で公表しているデータ及び調査復命書等の提供を受け、データ整理・電子化・入力・検査を経て、平成22~令和3 年度の(1)業務上事案データベース(脳・心臓疾患3,100 件、精神障害5,728 件)、(2)業務外事案データベース(脳・心臓疾患4,953 件、精神障害11,236 件)を構築した。当該データベースから年度別の基本集計を行った。 

結果

(1)脳・心臓疾患の業務上事案では、男性が約95%を占め、年齢は40~59 歳が多く、脳血管疾患が約6 割で、業種のうち最も件数の多い「運輸業,郵便業」は件数と共に雇用者100 万人対換算でも顕著に減少し、その他の業種でも概ね減少傾向であった。
(2)精神障害の業務上事案では男性が約65%で、年齢は30~49 歳が多く、気分[感情]障害(F30~F39)が約46%、業種では特に「医療,福祉」の件数が増加傾向で、雇用者100 万人対換算では多くの業種で増加していた。
(3)脳・心臓疾患の業務外事案では、男性が約85%で、年齢は50 歳以上が多く、脳血管疾患の割合と業種のうち「運輸業,郵便業」の件数並びに雇用者100 万人対事案数が多いことは業務上事案と同様であった。
(4)精神障害の業務外事案では、男性が約57%、気分[感情]障害(F30~F39)が約39%であった。年齢が30~49 歳に多いこと、業種の件数では「製造業」、「卸売業,小売業」、「医療,福祉」、「運輸業,郵便業」、雇用者100 万人対換算では「情報通信業」、「運輸業,郵便業」が多かったことは業務上事案と同様であった。

考察

過労死等の業務上事案数の増減は業種別の経年変化の増減が反映されていると考えられ、業務外事案では性別、年齢といった属性において業務上事案とは若干の差異が見られた。このことから、継続的な過労死等事案のモニタリングを実施し、属性等について可能な限り深掘り分析を並行して実施することが望まれる。

キーワード

労災支給事案、労災不支給事案、経年変化 

執筆者

佐々木 毅 

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