【令和5年度】 業種・職種別の過労死等の特徴と分析結果活用に関する研究
研究要旨
この研究から分かったこと
「自動車運転従事者(運輸業)」と「建設業」を対象として過労死等防止の啓発と防止策の普及を促進するファクトシートを作成した。対象者を明確にし、伝える内容、伝え方などを検討する必要がある。
目的
第14 次労働災害防止計画(2023 年度から2027 年度)では過労死等防止調査研究センターにおける研究成果を踏まえた業種別・職種別の防止対策の作成及び周知に取り組むことが記載され、業種別・職種別に注目した取組みが必要とされている。本研究では、令和6(2024)年4 月に時間外労働の上限規制の適用が開始される自動車運転従事者(運輸業)、建設業を対象に、対象業種・職種における事案分析研究等の知見の整理及び成果の活用について検討することを目的とする。
方法
平成27 年度より実施してきた過労死等事案研究のうち、運輸業・郵便業、建設業に関連した調査研究報告を収集し、各分担研究報告においてまとめられた過労死等防止のために取り組むべき視点の整理を行う。さらに、業種・職種毎の過労死等の特徴と防止対策の優先事項や具体的な取組みを紹介するA4 で2~4 枚程度の「業種・職種別の過労死実態報告書(Factsheet(FS))」(案)を作成する。
結果
過労死等の実態に関する研究報告書のうち運輸業・郵便業10 報、建設業3 報から、それぞれの業種・職種において過労死等の実態として整理すべき事項をまとめた。特に、①令和4 年度の脳・心臓疾患194 件のうち、業種分類では「運輸業、郵便業」が56 件(28.9%)で最も多く、「建設業」が30 件(15.5%)で2 番目に多い業種であること、雇用者100 万人あたりの発生件数はそれぞれ2 番目、4 番目であること、②令和4 年度の精神障害710 件のうち、「運輸業、郵便業」が63 件(8.9%)で5 番目、「建設業」が53 件(7.5%)で6 番目に多い業種であること、雇用者100 万人あたりの精神障害事案数は、「運輸業、郵便業」が15.1 件(10.0%)で最も高く、「建設業」は9.3 件(6.3%)で7 番目に発生率の高い業種であること、③過去の同業種・職種における事案分析資料のレビューを通じて過労死等防止に重要な情報を整理した。これらの結果に基づき自動車運転従事者(運輸業)と建設業を対象として、過労死等の実態及び過労死等防止について働きかけるファクトシート(リーフレット)案を作成した。
考察
作成された資材の活用が期待される。一方、作成されたファクトシート案は内容、及び情報の伝え方などを含め今後も検討を進め、現場の管理者、ドライバー自身、人事・労務管理担当者、産業保健実務者、また行政担当者や研究者からの意見などを集約し、過労死等防止に重要なファクトシートとして整理する必要がある。
キーワード
自動車運転従事者(運輸業)、建設業、ファクトシート
執筆者