【令和5年度】 トラック運送業における運行パターンの定量解析
研究要旨
この研究から分かったこと
特定の運行パターンやパターンの安定性において、ドライバーに対する運行の過重性が異なる可能性が示唆された。Web 調査から、同じトラックドライバーであっても、業種別に対策を検討する必要がある項目があることが示された。
目的
過労死等事案から得られた特徴的な運行パターンに基づいて、デジタルタコグラフ(以下「デジタコ」という。)データから運行をパターン分類し、その特徴や過重性について評価することを目的とする。今年度はドラックドライバー個人の運行パターンやその安定性に着目し、勤務間インターバルや荷扱い時間等の勤務指標との関連を分析した。また、過労死等事案の背景要因、影響要因を検討するために、運輸業と非運輸業では様々な制度が異なることに注目し、トラックドライバーの労働時間や運行管理、健康管理等の実態の調査を行った。
方法
デジタコデータを元に分類したドライバーの運行8 パターンと、勤務間インターバルや荷扱い時間による相違を評価した。運行パターンの安定性による勤務間インターバルの相違についても評価した。また、労働環境と健康管理に関するWeb 調査について、運転する車のナンバーに関する回答を基にナンバー色による相違を比較した。
結果
平均勤務間インターバルは日勤夜勤混在型で最も長く14.5 時間、短休息型で最短の4.4±1.4 時間であった。短休息型では51.2±10.3%の運行が勤務間インターバル9 時間未満であった。運行パターンの安定性が高いあるいは低いと勤務間インターバル時間が長くなる傾向があった。また、安定性指標が高いあるいは低いと、9 時間未満の勤務間インターバルとなる運行は少ない傾向となった。Web 調査の結果では、緑/白ナンバー間で車の大きさ、手待ち(荷待ち)時間、勤務間インターバル、アルコールチェック、体調不良時の対応行動に違いがあった。
考察
過重性の高まりやすい運行パターン、運行管理の目の届きにくい運行パターンがある可能が指摘された。また、同じトラックドライバーであっても、運送業と非運送業では、制度等により、運行や健康の管理体制や働き方に相違があり、業種別の対策を検討する必要性が示唆された。
キーワード
デジタルタコグラフデータ、運行パターン、緑/白ナンバー
執筆者
酒井 一博