【令和5年度】 COSMIN 指針に基づいた「過労徴候しらべ」の改訂-改訂版尺度の開発と内容的妥当性、構造的妥当性及び内的整合性の検証-

  • 令和5年度
  • 木内 敬太
  • 労災事案分析
  • 現場介入研究
  • 長時間労働
  • 疲労
  • ストレス
  • 睡眠
  • ツール

研究要旨

この研究から分かったこと

過労徴候は、疲労感と睡眠障害、精神症状、極度の身体不調の3要素から構成される可能性が示唆された。過労徴候は、労働時間、過重労働、女性、特定の年代、業種、職種、雇用形態と関連していた。

目的

本研究の目的は過労徴候しらべの改訂版を開発し、内容的妥当性、構造的妥当性、内的整合性を検証することである。 

方法

過労死の遺族の方に対するヒアリングや専門家による話し合いを経て項目が追加された過労徴候しらべについて、患者報告式アウトカム尺度の評価指針であるCOSMIN(Consensus-based Standards for the Selection of Health Measurement Instruments)に準じた方法で、国内の労働者32 名に対する記述式調査、国内在住者10 名に対するインタビュー調査、国内の労働者297 名に対するオンライン調査を実施した。探索的因子分析により、過労徴候しらべ改訂版の項目選択を行い、因子構造を明らかにした。重回帰分析により、過労徴候と関連のある要因を検討した。

結果

国内在住者に対する記述式調査とインタビュー調査を踏まえて質問票を修正したことで、内容的妥当性が確保された。探索的因子分析の結果、3 因子各6 項目(全18 項目)の尺度が得られ、各因子を「疲労感と睡眠障害」、「精神症状」、「極度の身体不調」と命名した。各因子のクロンバックのα係数(研究データの解析における信頼性を示す基準の1 つであり、クロンバックという学者によって開発された係数)は、0.87、0.82、0.73 であった。それぞれの下位因子は、裁量の少なさや運輸業, 郵便業、裁量の少なさや仕事量の多さ、自営・会社員や病気・ケガ・災害などと関連していた。 

考察

過労徴候しらべ改訂版の内容的妥当性、構造的妥当性、内的整合性が認められた。18項目3 因子のモデルは、まだ改善の余地があり、別サンプルでの確認的因子分析が求められる。また、再検査による信頼性や測定誤差の検証、回答の分布が測定範囲の下限に偏る床効果への対処が必要である。過労徴候の下位因子は、他の変数と、それぞれが特有の関連を示していた。時間経過の中で、他の変数と過労徴候の3 因子がどのように影響し合い、最終的に過労死等が発生するのかについて、より詳細な研究が期待される。

キーワード

過労、過重労働、患者報告式アウトカム尺度

執筆者

木内 敬太

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