【令和5年度】 ドライバーの心血管系負担に対する休憩効果の検討
研究要旨
この研究から分かったこと
過労死等が多い運輸業では拘束時間が長く、休憩が不規則で取りにくいことから、勤務中の心血管系負担を蓄積しやすいと考えられる。本研究では、ドライバーの勤務中の心血管系負担を緩和するため、1 時間程度の昼休憩の確保が望ましいことを示した。
目的
本研究では、これまでの研究成果を踏まえ、過労死等の発生が多い運輸業のドライバーの心血管系負担を緩和できる休憩パターンについて検討することを目的とする。
方法
①前期(平成30 年度~令和2 年度)の実験データを分析し、研究成果をさらに公表した。
②複数の運輸会社から収集した運行日誌を分析し、ドライバーの休憩実態と実際の走行ルートを明らかにし、それに基づいて実験のプロトコールを設定した。
③ドライビングシミュレータを用いて実験を行った。40~50 代の健康男性47 名が実験に参加し、市街地1 時間と高速道路1 時間の走行を1 セットとし、計3 セットを走行した。参加者は4 つの休憩条件のいずれかに1 回のみ参加し、異なる休憩パターンによる心血管系反応への緩和効果を検討した。
結果
①英文論文1 本と和文論文2 本を公表した。英文誌に、短時間睡眠後の長時間労働が労働者の心身に悪影響を及ぼすことを明らかにした論文を公表した。和文誌に、長時間労働による心血管系負担の増大が、特に高年齢労働者で大きいこと、長時間労働により主観的ストレスと疲労が上昇したがパフォーマンスは低下しなかったことを明らかにした論文を公表した。
②複数社の運行日誌を分析した結果、地場の日帰りトラックドライバーは拘束時間が長く(平均11 時間)、勤務中の休憩時間が短い(1 時間未満が8 割)こと、運行ルートにおける高速道路と一般道路の使用はそれぞれ5 割程度であることを明らかにした。
③心血管系反応への緩和効果について、60 分程度の長い昼休憩は運転中の心血管系反応の緩和効果が認められたが、30 分以下の短い昼休憩は心血管系反応の緩和効果が認められなかった。
考察
本研究の結果が、労働政策の制定や運輸業のトラックドライバーの勤務管理などに活かせれば、労働者の健康維持や、さらに心血管系疾患が原因となる過労死等の予防につながると考えられる。
キーワード
心血管系負担、運輸業、休憩
執筆者