【令和6年度】業種・職種別の過労死等の特徴と分析結果活用に関する研究2024

  • 令和6年度
  • 吉川 徹
  • 重点業種
  • 労災事案分析
  • ツール

研究要旨

この研究から分かったこと

医師、看護師、情報通信業を対象として過労死等防止の啓発と防止策の普及を促進するファクトシートを作成した。また、精神障害の労災認定事由の相違と防止視点を支援する業種比較版のファクトシートを作成した。今後の普及が期待される。

目的

第14次労働災害防止計画(令和5(2023)年度から令和9(2027)年度)では、過労死等防止調査研究センターにおける研究成果を踏まえた業種別・職種別の防止対策の作成及び周知に取り組むことが記載され、業種別・職種別に注目した防止対策の取り組みが必要とされている。本研究では、令和6(2024)年4月に時間外労働の上限規制の適用が開始された医師、重点業種「医療」の看護師、「IT産業」の情報通信業、精神障害の業種別の労災認定事由に注目し、対象業種・職種における事案分析研究等の知見の整理及び成果の活用について検討した。

方法

平成27(2015)年度より実施してきた過労死等事案研究のうち、重点業種「医療」「IT産業」に関連した調査研究報告を収集し、各分担研究報告においてまとめられた過労死等防止のために取り組むべき視点の整理を行う。また、多業種・多職種の精神障害に注目して、認定事由とされた心理的負荷の違いの整理を行う。これらの結果をもとにA4で2枚程度の「業種・職種別に過労死等の実態をまとめたファクトシート」を作成する。令和5(2023)年度に作成した「自動車運転従事者」「建設業」についても、公開に向けてのデータの見直し、レイアウトの修正などを行う。

結果

これまで公開された過労死等の実態に関する研究報告書(医療3報、IT産業2報)及び関連して発表された学術論文等を参照し、対象となった業種・職種において過労死等の実態として整理すべき事項をまとめた。これらの結果に基づき医療(医師)、医療(看護師)、IT産業(情報通信業)、業種・職種別の精神障害の労災認定事由としての心理的負荷要因に関する情報を整理し、過労死等の実態の紹介及び過労死等防止を促進するファクトシート案を作成した。「自動車運転従事者」「建設業」についても見直し、HP公開版を作成した。

考察

作成された資材の活用が期待される。一方、作成されたファクトシート案はその対象者ごとで過労死等防止に関する対策内容が異なる可能性があり、内容及び情報の伝え方などを含めて今後も検討を進める必要がある。特に、現場の管理者、医師、看護師、IT産業で働くシステムエンジニア等の技術職や事務職、人事・労務管理担当者、産業保健実務者、また行政担当者や研究者からの意見などを集約し、過労死等防止に重要なファクトシートとして見直し、公開し、活用する場面などを検討する必要がある。

キーワード

ファクトシート、重点業種、過労死等

執筆者

吉川 徹

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