【令和6年度】建設会社の土木現場における現場コミュニケーションと心理的安全性に関する調査研究
研究要旨
この研究から分かったこと
元請け社員と協力会社社員という、立場の異なる労働者が一緒にプロジェクトを推進するという土木現場において、職場コミュニケーションや心理的安全性に関する実態調査及び、健康・生産性指標との関連を検証した。今年度は調査の実施にとどまったため、来年度以降に詳細な解析を実施する。
目的
本研究は、日本全国の土木現場を対象に、元請け社員と協力会社職長間のコミュニケーションの実態とその労働安全・衛生への影響を明らかにすることを目的とした。特に、両者の間でコミュニケーションの質や量に関する認識のずれの有無を調査して、土木現場における安全・健康な職場環境を実現するための知見を得ることを目指している。
方法
令和6年12月に、大手ゼネコンの土木現場49か所で働く労働者861名を対象とした匿名調査を実施した。質問票では、デモグラフィックデータ、勤怠データ、睡眠に関する設問に加えて、現場の雰囲気やコミュニケーションに関する設問、心理的安全性、ワークエンゲージメント、うつ症状リスクに関する質問を尋ねた。861名のうち、研究利用に同意した798名のデータを解析対象とした。今後さらに、現場(49現場)や立場(元請け・協力会社職長)別の基礎統計や立場間での認識のずれを分析し、心理的安全性やワークエンゲージメントとの関連性を検証する予定である。
結果
集計結果では、女性比率が低く、元請け社員は協力会社職長よりも労働時間が長く睡眠時間が短い傾向が見られた。また、ネガティブな発言を受けた経験は元請け社員の方が多かった一方、ポジティブな発言を受けた経験も元請け社員の方が多かった。職場(現場)の心理的安全性尺度については、元請け社員と協力会社社員間で大きな差はなかった。今後より詳細な集計・解析を実施する予定である。
考察
労働時間が長いと睡眠時間が短縮することが知られており、今回も特に元請け社員でその傾向が見られた。ネガティブ・ポジティブな発言を受けた経験率において元請け社員の方が高かった点は、コミュニケーション量の多さや調査方法による回答バイアスの可能性が考えられるため、さらなる解析が必要である。今後は、認識のズレに着目した解析や現場別の傾向抽出を行い、職場の心理的安全性と労働衛生・安全指標との関連を考察していく予定である。
キーワード
心理的安全性、職場コミュニケーション、建設労働者
執筆者