【平成29年度】 トラックドライバーの働き方の実態にあわせた効果的な過重労働対策に関する研究
研究要旨
過労死等の労災認定数の多い貨物自動車運転者(トラックドライバー)の労働実態把握とともに負担の大きい働き方を抽出することにより、効果的な過重労働対策の検討を行うことを目的とした。
アンケート調査では全国の1,992人のトラックドライバーから有効回答が得られた。代表的な運行形態である、日帰り(昼間と夜間)と長距離(1泊2日、3~4日、5日以上)に分けて、過労死等の労災認定要件に関連する項目と疲労度の関係について解析を行った。
その結果、1日の疲労と週の疲労のどちらも回復しにくいと訴えたドライバーの割合は、日帰り(22~5時にかかる)運行で高く、この運行形態では、1か月間の時間外労働が81時間以上であった割合が高く、夜勤(22~5時にかかる勤務)回数が多く、勤務日の睡眠時間が短かった。また、疲労回復を困難にするのは、勤務日と休日の睡眠時間がそれぞれ7時間未満の場合であることが確認されたが、運行形態及び時間外労働時間や夜勤回数との関係は見られなかった。脳・心臓疾患に関連する高血圧症、高脂血症、糖尿病、肥満の既往歴があると回答した割合は、5日以上の運行を行うドライバーで高かったが、事故やヒヤリハットの安全状況には運行形態による違いは見られなかった。
以上より、トラックドライバーの過重労働対策には、勤務日と休日における睡眠確保を中心とした運行計画が重要であることが示された。しかし、時間外労働時間や夜勤回数が変動しやすく、休息期間の調整が難しいことが考えられる拘束時間の長い長距離運行への対策については、観察調査で得られた詳細な労働状況と生理・心理的な指標による測定結果の解析から検討を行う必要がある。