【令和3年度】 脳・心臓疾患及び精神障害の労災認定事案の経年変化解析
研究要旨
この研究から分かったこと
平成22~令和元年度の労災認定事案では、性別、年齢等の基本属性には顕著な差異は見られなかったものの、職場環境等については近年に変化が見られた。
目的
平成22~令和元年度の10 年間の脳・心臓疾患及び精神障害の労災認定事案についてデータベースを構築して解析し、性別、年齢、疾患名、業種、健康管理等及び出来事別の経年変化を検討することを目的とした。
方法
データベース構築は、(1)厚生労働省が「過労死等の労災補償状況」で公表しているデータ及び調査復命書等の提供を受け、データ整理・電子化・入力により令和元年度データベース(脳・心臓疾患216 件、精神障害509 件)を作成、(2)上記(1)と平成22~30 年度データベースを結合し、平成22~令和元年度データベース(脳・心臓疾患2,734 件、精神障害4,491件)とした。
結果
(1)脳・心臓疾患事案では、男性が95%超、発症時年齢は40 歳以上が8 割超、脳血管疾患と虚血性心臓疾患等の比は、男性では約6 割:約4 割、女性では約9 割:約1 割で、最も多いのは脳内出血で約3 割、業種では事案数及び雇用者100 万人対事案数においても「運輸業,郵便業」が最も多かった。
(2)精神障害事案では、男性が7 割弱、発症時年齢は男性が40~49 歳、女性が30~39 歳で多く、自殺事案では男性が95%超を占め40~49 歳に多く、女性は20 代と30 代で7 割超を占め、男性は気分[感情]障害(F30~F39)が6 割弱に対し女性は神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害(F40~F48)が7 割超で、男女全体で最も多い疾患はうつ病エピソードで4 割超であった。
(3)近年、脳・心臓疾患事案では、事業場が就業規則及び賃金規程を有する割合、健康診断実施率が増加、また、精神障害事案では、具体的出来事の「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事」、「2 週間以上にわたる連続勤務」、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行」が増加しているように見受けられた。
考察
性別、年齢、決定時疾患名といった基本属性において年度間で顕著な差異は見られなかったものの、労務管理や健康管理、出来事といった職場環境等については変化のある項目が見られた。以上から、可能な限り深掘り分析を進めることと共に、継続的な労災認定事案のモニタリングが望まれる。
キーワード
労災認定事案、経年変化
執筆者