【令和3年度】 長距離トラックドライバーの勤務中の血圧値を上昇させる労働休息条件の検討

  • 令和3年度
  • 松元 俊
  • 重点業種
  • 現場介入研究
  • 長時間労働
  • 不規則勤務
  • 勤務間インターバル
  • 疲労
  • ストレス
  • 睡眠

研究要旨

この研究から分かったこと

長距離トラックドライバーの勤務中の血圧値は、既往歴有無にかかわらず休日明けの出勤時に高くなることが示された。また、出勤時の収縮期血圧を上昇させるのは、早い出勤時刻であることが示された。

目的

長距離トラックドライバーを対象として、脳・心臓疾患発症のリスクである高血圧に関連する労働と休息の要因を明らかにすることを目的とした。

方法

4 事業場の67 人の男性長距離トラックドライバー(平均±標準偏差、51.7±7.2 歳)が調査に参加した。調査は2020 年11 月から2021 年2 月末までの間に、トラックドライバー1 人につき休日を含む連続30 日間の測定を行った。調査参加者は、勤務日の出勤時と退勤時の2回、睡眠を伴う休息前と休息後の2 回、最低4 回の点呼時に血圧測定値と主観評価値を点呼者に申告した。睡眠計は、車中泊を除く自宅での全ての睡眠の測定を行った。勤務中の血圧値の変化と、血圧値に関連する労働休息条件の検討にはそれぞれマルチレベル分析を用いた。

結果

調査期間中の488 勤務について解析した結果、1 回の勤務の拘束日数は2.9±1.3 日、出勤時刻は10:34±4:43、退勤時刻は12:04±6:07、勤務間インターバルは35.3±22.1 時間であった。睡眠は、総睡眠時間が7.1±2.0 時間、就床時刻が22:06±2:00、起床時刻が6:17±2:15 であった。勤務中の血圧値は収縮期と拡張期のどちらも、出勤時が休息前、休息後、退勤時に比して有意に高かった。反対に、主観的な疲れと眠気のどちらも出勤時から退勤時に向かって上昇しており、退勤時は休息後、出勤時に比して有意に高かった。収縮期血圧では、年齢が1 歳上がると0.56mmHg 上昇し、BMI が1kg/m²上がると1.20mmHg 上昇し、出勤時刻が1 時間早くなると1.12mmHg 上昇することが示された。

考察

長距離トラックドライバーの勤務1 回あたりの平均拘束日数は2.9 日と長かったものの勤務途中や退勤時の血圧値の上昇は見られなかった、それに対して勤務間インターバルは35.3時間、勤務前の睡眠時間が7.1 時間あり、出勤時の疲れと眠気が他側定点に比して低かったことから、勤務前の疲労回復には十分であったと考えられた。以上より、出勤時の収縮期血圧上昇は早朝勤務の負担の影響が大きいと考えられ、血圧上昇を抑えるために出勤時刻を遅くすることの重要性が示唆された。

キーワード

長距離トラックドライバー、血圧、出勤時刻

執筆者

松元 俊

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