【令和3年度】 ドライバーの心血管系負担に対する休憩効果の検討
研究要旨
この研究から分かったこと
長時間労働は心血管系の負担を増大させるが、特に高年齢者の負担が大きいこと、短時間睡眠後で悪影響が大きいことが示された。また、過労死が多い運輸業では拘束時間が長く、勤務中の休憩が短いことから、勤務中の心血管系負担を蓄積しやすいことが考えられる。本研究では、その軽減策を検討していく予定である。
目的
本研究では、過労死等の発生が多い運輸業のドライバーの心血管系負担を緩和できる休憩パターンについて検討を行う。
方法
今までの研究結果を取りまとめ、これらを踏まえ、実際の運輸会社から収集した運行日誌を再分析し、休憩の時間と回数などのデータに基づいて今期の実験プロトコールを設計した。具体的に、実験では、ドライビングシミュレータを用いて、過労死の多い40~50 代男性を対象とし、異なる休憩パターンの運転条件での血行動態反応と中枢系反応を比較することによって、心血管系を中心とした心身負担を緩和できる休憩パターンを検討する。
結果
①今までの研究の成果を公表した。和文誌に、長時間労働による心血管系負担の増大、特に高年齢労働者で大きいことを明らかにした論文が掲載され、また、英文誌に、短時間睡眠後の長時間労働が労働者の心身に悪影響を及ぼすことを明らかにした論文がアクセプトされた。②当センターで行ったWEB 調査の結果、運輸業において休憩が取れない、取りづらいと回答した者を合わせると、5 割以上であった。さらに日帰り運輸業者4 社から収集した126日分の運行日誌を分析した結果、平均拘束時間は11 時間、勤務日の総休憩時間は1 時間、休憩回数は0 回~2 回であった。③我々の先行研究では、長めの休憩のみが心血管系負担の軽減に効果的であると報告した。しかし、実際の運輸業では勤務中の休憩時間が足りないことが考えられる。今期の実験では、休憩時間2 条件(30 分と60 分)、休憩回数2 条件(1 回と2回)の計4 条件で実験を行い、ドライバーの心血管系負担を軽減できる休憩パターンを検討・提案を行う予定である。
考察
本研究の結果が、労働政策の制定やドライバーの勤務管理などに活かせれば、労働者の心血管系の負担が緩和でき、長期的には健康維持や、心血管系疾患が原因となる過労死等の予防につながると考えられる。
キーワード
心血管系負担、運輸業、休憩
執筆者