【令和4年度】 脳・心臓疾患及び精神障害の過労死等事案の経年変化解析
研究要旨
この研究から分かったこと
過労死等の業務上事案数の増減に対する業種別件数、及び業務上外事案の経年変化が分かった。
目的
脳・心臓疾患及び精神障害の過労死等事案について業務上データベース並びに業務外事案も含めた業務上外データベースを構築して解析し、性別、発症時年齢、疾患名、業種、健康管理等及び出来事別の経年変化を検討することを目的とした。
方法
過労死等データベースを利用し、基本集計を行った。データベースは厚生労働省が「過労死等の労災補償状況」で公表しているデータ及び調査復命書等の提供を受け、データ整理・電子化・入力・検査により作成し、(1)平成22 年度から令和2 年度業務上データベース(脳・心臓疾患2,928 件、精神障害5,099 件)、(2)平成22 年度から令和元年度業務上外データベース(脳・心臓疾患6,863 件、精神障害13,105 件)を構築した。
結果
(1)業務上事案における脳・心臓疾患では令和2 年度には女性並びに60 歳以上の割合が増え、業種では最も多い「運輸業,郵便業」は件数と共に雇用者100 万人対換算でも顕著に減少し、その他の業種でも概ね減少傾向であった。(2)業務上事案における精神障害では令和2 年度には女性並びに神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害(F40~F48)の割合が増え、業種では「医療,福祉」の件数が最も多く、雇用者100 万人対換算では多くの業種で増加していた。(3)業務上外事案における脳・心臓疾患では、男性が約9 割、発症時年齢は40~59 歳が多く、脳血管疾患と虚血性心臓疾患等の比は約6 割:約4 割、最も多いのは脳内出血で約3 割、業種では事案数及び雇用者100 万人対事案数においても「運輸業,郵便業」が最も多かった。(4)業務上外事案における精神障害では、男性が6 割強、発症時年齢は30~49 歳に多く、最も多い疾患は適応障害、業種の事案数では「製造業」、「医療,福祉」「卸売業,小売業」、「運輸業,郵便業」が多かった。
考察
業務上事案については令和2 年度に性別、発症時年齢といった基本属性においてわずかながら差異が見られたことの他に、過労死等の業務上事案数の増減は業種別の経年変化の増減が反映されていると考えられた。このことから、可能な限り深掘り分析を進めることと共に、継続的な労災認定事案のモニタリングが望まれる。
キーワード
労災認定事案、経年変化
執筆者