【令和4年度】 メディア業界における過労死等の労災認定事案の特徴に関する研究
研究要旨
この研究から分かったこと
メディア業界でも精神障害による過労死等が増加している。精神障害は若年者、脳・心臓疾患は管理業務にさしかかる年代への対策が重要である。急速に変化する業務の質と量への対応、支援がメディア業界における過労死等防止に必要である。
目的
メディア業界には放送業、広告業、新聞業、出版業などが含まれ、近年のデジタルトランスフォーメーションの影響を大きく受け、その業種、業態、関連職種が大きく変化している。メディア業界で働く労働者の過労死等が報告されており「過労死等の防止のための対策に関する大綱」でも重点業種となっている。これまで平成22 年度から26 年度のメディア業界における過労死等の事案分析結果が報告されているが、今回、メディア業界における労働者の労災認定事案の特徴を明らかにすることを目的として、平成27 年度以降の事案を追加して分析を行った。
方法
「過労死等データベース」を活用し、平成22 年4 月から令和3 年3 月までの11 年間のメディア業界における、脳・心臓疾患事案35 件、精神障害・自殺事案113 件を対象とした。性別、発症時年齢、生死、支給決定年度、職種、業種、決定時疾患、心理的負荷に関する具体的な出来事などの特徴をまとめた。
結果
11 年間の変化では、脳・心臓疾患が減少傾向で、精神障害が増加傾向であった。性別では脳・心臓疾患は男性が8 割で、精神障害は男女半数ずつであった。発症時年齢は脳・心臓疾患では40 歳代、精神障害では20 歳代が最も多く、若年者の被災が際立っていた。メディア5 業種で最も多いのは広告業60 件(40.5%)で、次に映像業44 件(29.7%)、放送業25 件(16.9%)、出版業13 件(8.8%)、新聞業6 件(4.1%)の順であった。職種は多岐にわたっていた。事業場の規模は50 人未満の事業場が半数を超えた。精神障害の心理的負荷の出来事では「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」が最も多く、特に自殺事案では6割以上は同出来事が該当した。直近の精神障害事案には令和元年度に発生した放火事件の被災者が15 件含まれていた。
考察
メディア業界は専門性が高く、高度な知識やコミュニケーション能力が求められる業務が多い。事案分析からは急激な業務の質や量の変化への対応が不十分であったために過労死等を発症している事案が多く確認された。時間外労働や連続勤務の制限、経験の浅い労働者への支援、業務管理を行う管理者へのマネジメント支援等が重要と考えられた。
キーワード
メディア業界、若年者、業務の質と量
執筆者